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連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話

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 「こらこら。勘違いをするな。褒めているのは着物の方だ。
 着ている人間の本性と相まって、独特の雰囲気が作りだされる。
 君のセンスも相当なもののようだ・・・・
 お母さん譲りの、何かが有るということだろうな。
 しかし、女性が美しさを追及するということは、医学的に見ても意味がある。
 お化粧をする。お洒落に着飾る。
 そうすることで、女性ホルモンの分泌が盛んになる。
 ホルモンが生命を維持し、男女の身体の違いを作る。
 また、感情をコントロールする役割を持っているということも、
 良く知られている。
 美しくなろうとする努力がその作用として、ホルモンの活動を活性化させる。
 男もまたそんな女性の美しさを見て、狩猟本能を覚醒させる。
 そんな風にして、この世には無数の男女のカップルが誕生する訳だ」

 「先生。論理が飛躍しすぎています・・・・
 言いたいことは、よく理解できましたが、
 いまだに恋人の出来ない私は、いったいどうすればいいのでしょうか。
 努力の不足が原因でしょうか、それとも先生のおっしゃる女性ホルモンが
 まだまだ不足をしているせいなのでしょうか?」


 「医学的に見て、君の身体には、何一つ不足するものが無い。
 胸はそれなりに発達しているようだ。腰やお尻の形も申し分ない。
 しいて言えば、挑発のためのインパクトが欠如しているようだ。
 まだ君は、『男が欲しいと言うシグナル』を、全身から発信していない。
 ここだけの話だが、処女の頃には、女の本来の美しさやお色気などは
 一切存在をしていないと、昔からよく言われている。
 本当に女性が美しく光り輝くのは、男を充分に知り始めた頃からだと
 言われている。
 第一子を出産した直後あたりが、ピークになると言われている。
 女性のライフワークの絶頂期が、そのあたりに有るからだ。
 男たちをその気にさせるオ―ラ―も、同じようにその時代に
 最盛期をむかえる。
 うん。また話しの中身が脱線をしてしまった。あっはっは」

 杉原医師が、大きな声で笑う。
杉原医師の背後を、新人看護士を引き連れた看護婦長が通りかかる。
『コホン』と軽く咳払いをしたあと、厳しい目線を杉原医師のもとへ送る。
『不謹慎なお話は、ほどほどに』と、いつもの笑顔を残して、2人の元から
颯爽と立ち去って行く。

 
 「いやいや、久々に良い着物を着た日本美人に行き会ったために、
 俺も思わずテンションをあげすぎてしまったようだ。
 だが、響くん。
 此処だけの話だが、君が二部式着物で山本氏の看病に現れるようになってから
 うちの看護士たちの様子が変わり始めてきた。
 君から随分と刺激を受けたらしい。
 看護師たちの『自分磨き』が始まった。
 みんなのお化粧が念入りになり、我が病院にも、美人がたくさん増えてきた。
 女と言うものは、自分が一番きれいだと思い込んでいるようだ。
 ゆえに自分の前にこれはという強敵や、ライバルが登場すると、
 そうした本能が、あらためて揺り起こされるようだ。
 そうした効果の結果として、当病院に美人の看護師さんがやたらと
 増えてきた。
 それはまた、患者さんたちにもいい影響を与える。
 美人の笑顔と言うものは、時として病院が出すクスリを上回るほどの、
 活性的な効果を生み出す。
 君の登場が、病院を変え始めたということだ。
 笑顔のままで、最後まで山本氏を見送ってやってくれ・・・・
 辛い仕事だが、君ならできるだろう。
 事態は、すでにどうにもならない末期の段階に達している。
 笑顔で山本氏を癒しながら、静かに送り出してやってくれ。
 君ならそれができるだろう。
 頼んだぜ、桐生お召しが似合う、ナイチンゲール君」