連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第79話
「父が明らかになる」
「あなたはなぜ、原発について書きはじめたのですか?」
新しく入れ直したお茶を手渡した後、
響が椅子を引き寄せて、いつものように山本の横へ腰を下ろす。
長いお話になりますと言う、響からのサインだ。
『聞きますよ』と山本の目が笑いを浮かべて、待ちかまえている。
「それでは・・・・コホン。」と響が、咳払いをする。
膝に置いたノートパソコンの上へ響が、両手を置く。
「家出をしてから、沢山の人に出会いました。
生きる元気と、世の中に向って目を向けるきっかけをもらいました。
このパソコンもそのひとつです。
同じ歳の男の子が、お前が使えと言って、別れ際に私にくれました。
その人と、行方不明の伯父さんを探して被災地へ出掛けたことが
私の転換点になりました。
金髪の英治くんと、もっと真摯に向き合っていれば私たちは、
もしかしたら、恋愛に落ちていたかもしれません。
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」 第76話~80話 作家名:落合順平