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みやこたまち
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そののちのこと(無間奈落)

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「こんなところに、君はいる。居つづけている。隠遁したつもりかね。お陰で僕までこんな辺鄙なところへやってこなければならなくなった。別に悔やんじゃいないがね。君のいるところへなら、何処へだって行くつもりだった。それが地獄だというのなら、なおのこと好都合というものだ。苦しむのは君だ。常に、そう常にだよ」
 口髭男はここまで言うと感慨深げに天を見上げてため息をついた。そのかすかに開いた唇のな隙間に、あの触手が入り込んだ。信夫にはその様子がはっきりと見えた。同時に暗くて真っ赤な中で笑っている女も見えた。窮屈な所で宙に浮いているような姿勢のまま笑っている女のこめかみにも、あの触手が取りついていた。やがて、様々な物が信夫の脳に投影されたが、ばらばらな物が幾重にも重なっているようで、全く理解できなかった。激しい嘔吐感が繰り返し起こり、心臓が革紐で締め上げられるように痛んだ。
 先程、予感した風が信夫の体に届いた。遠くから風見の軋む音が聞こえた。(第一部完)