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みやこたまち
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そののちのこと(鬼)

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第二章



 穂積信夫の生活は、何度目かの停滞期に陥っていた。
 まだ、青年と呼ばれる人生の一時期にありながら、彼の精神は老境のそれに酷似していた。例えばそれは、軟禁状態に置かれている捕虜の精神に似ていたかもしれない。金の為に動く必要は無かった。こうした境遇は、彼の天分に属していた。信夫は、外界と自分との軋轢に神経を痛めつけられ、理想と現実との格差に絶望を繰り返しながら、一日一杯の酒、半時の平安のみを慰めとして生きる一般大衆の生活とは明らかに一線を隠した世界に暮らしていた。
 彼は広大な敷地の古びた屋敷に住んでいた。取り巻く庭は四季を通じて五感を楽しませた。飽くことなく巡る天体のそれぞれの瞬間を敏感に反映し、その度に新しい感動、鮮烈な印象をもたらすこの小さな世界。他人という元凶のいないこの完成された世界を、彼は、叔父から、完成された状態で譲り受けた。だが、信夫にとって、それは僥倖ではなかった。庭には亡霊が住み着きやすい。他にすべきことをもたない信夫のような境涯の男にとってはなおのこと、である。