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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 7.

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いつになく機嫌のよい五十六は部屋に裕美子と女将を座らせて、今日は三人で少し話そうと言った。
雑談からお互いの家の話になった。女将は兄が海軍大将の米内であること、五十六の生まれは長岡で子供の頃は高野五十六と言って長岡藩士の子孫であること。後に長岡藩家老だった山本家に養子に行って山本五十六となったことなどを語った。
そして大正六年八月三十一日に三橋礼子と結婚して大正八年から二年間アメリカのハーバード大学へ留学していたことも話した。

「山本様はお名前が珍しいですね。何か由縁がおありなのですか?」

裕美子が尋ねた。

「五十六か。生まれたときに父が五十六歳だったからだ。単純なんだよ、ハハハ」

「名前にするには良いタイミングだったのですね。五十七歳だとイソシチさんですものね」

「ハハハ、面白いことを言うな。イソシチか。なるほど。お前はどこの出身なんだ。そういえば聞いていなかった気がする」

「はい、生まれは浅草で育ったのは今兄が住んでいる場所の滝野川です。父は話しましたように国会議員で私が中学生になったころから家にはほとんどいない状況でした。国会と地方回りとかやっていたようで、海外にも出かけていました。正直あまり思い出が無いまま父が病気で亡くなり兄が結婚したのを期に母と祖母の住んでる浅草に移りました」