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レイドリフト・ドラゴンメイド 第5話 光の行方

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 いや、達美の兄である応隆が率いるドラゴンドレス部隊に、引きずられるようにして連れてこられたのだ。
 その途中で立ち止まっている車もあれば、アスファルトに濃く黒いタイヤ跡をきざみ、暴れている車もある。
 あたりには、エピコスワインのロゴが入った木箱が幾つも転がっていた。
 パーティ会場に運ばれるはずだった物だ。 
 止まっていた装甲車の一台の上に、ハッチが開き、兵士が上半身を出した。
 その前には、社債された重機関銃がある。
 兵士はそれを動かし、ドラゴンドレス・マーク7の一台に向けた!
 データリンクが示す。向けられたのは兄、応隆の機体。
「うそっ! 」
 ドラゴンメイドは思わずそう叫んだ。
 間違えようがない。仕掛けたのは書記長たちの乗る車だ。
 ドラゴンメイドは、兄のそばに加わりたいという衝動に駆られる。
 少なくともイストリア書記長やエピコス師団長は、国民本位の指導者だ。
 そう信じていた。
 異世界から来た魔術学園生徒会を、まっとうな人間として扱ってくれた。
 だからこそ、ここまで連れてきてくれたのではなかったか?
 それが、ボルケーナを見たくらいで、こんなに取り乱し、攻撃するようなことするか?!

 それでも、間違いなくチェ連の最高権力者は地球人に銃を向けていた。
 だがその重機関銃を、より素早い動きでドラゴンドレス・マーク7が殴り落とした。
 この一撃で、銃身は下にねじ曲がってしまった。
 兵士はあわてて車内に戻る。
 応隆は、素早く装甲車の上に駆け上がり、馬乗りになった。
 機体は車体後ろに向き、その機械うでが車体後ろをまさぐった。
 分厚いドアが、あっさり引きちぎられた。
 開けられたドアの前には、集めの装甲を誇るドラゴンマニキュア・マーク4。
 彼が、開け放たれたドアに向かい、銃を撃った。
 データリンクは、その弾丸が殺傷力のない、電撃で相手の動きを止める物だと示している。
 いわゆる、ワイヤレステーザー。
 だが、達美には割り切れない思いがあった。
 ドラゴンマニキュアを着た警備員たちが、次々に装甲車から気絶した兵士たちを引きずり出す。

 これで、終わりなのか?
 ドラゴンメイドには、そう思えなかった。
「もしかすると……」
 木々の間には、分厚い鉄筋コンクリートで大砲や対空機関砲を守った防御陣地。
 それより、なにより目立つのは、直径100メートルはある鉄筋コンクリートのドーム。
 雄大な山脈の中で灰色のカビのように見える。
 その奥がマトリックス海南エリアの方面隊司令部だ。

「わたしたち、あの要塞に侵入したことがあるの」
 ドラゴンメイドの言葉は、2号も聴いていたことだ。
「ああ、マトリックス海沿岸地域を、取りあえずの拠点にするのに、邪魔だったから」
 武産の白い顔が、さらに青ざめる。
「でも、それは征服ではあるまいか」
「その話はあと! ねえ2号。その槍で厚さ12メートルの鉄筋コンクリートって打ち抜ける? 」
 バンカーバスターで有名な、地球でこういう要塞を攻撃するのにつかわれる地中貫通爆弾は、粘土層なら30メートル。鉄筋コンクリートならロケットで加速して6.7メートルまで貫通したという。

 それは予想外の質問だったのか、2号はぎょっとして、ドラゴンメイドと直径100メートルのドームを見比べた。
 流石に目が早いと、ドラゴンメイドは思った。
「あれを打ち抜くの? 」
「そう」
「できなくはないけど、穴掘りならボルケーナの方が早いよ。きっと」
 確かに、あのドナーが鉱山の女神でもあり、どこまでも山を掘り進めることは知っている。しかし……。
「やめとこう。用があるのは基地司令部のスーパーコンピュータだから。あいつが掘るのは質量攻撃―」
 ドラゴンメイドが言いかけた時、恨めしそうな声がした。
「誰がガサツだってぇ? 」
 突然、辺りの空が赤く染まった。
 ドラゴンメイドと2号をおう、無数のミサイルと砲火。
 それをきらびやかな赤い光線が、山も溶けよとばかりに、その熱をもって薙ぎ払ったのだ。
 光線が止んだ時、周囲に奇妙な物が浮かんでいることに気が付いた。
「あ、赤いクラゲ!? 」
 それは、ボルケーナのマジックボイスに似ていた。
 赤い石が燃えるように見える概念のかたまりが、先ほどの光線と同じものを彗星の尾のように引きながら漂っている。
 ただし、その大きさと数はけた違いだ。
 石は直径2~3メートルほどの岩石だし、数は確実に3桁に迫っている。
「無断で悪いけど、達美の姿を参考にさせてもらったよ」
 いつの間にか、ボルケーナのマジックボイスが戻ってきていた。
 ドラゴンメイドと2号のすぐ下の軌道には、中央をえぐられた岩石がついてきていた。
 人2人がちょうど乗れるボートのようだ。
 レイドリフトたちは、迷わずそれに乗り込んだが、頭の中には先ほどの1号の言葉が響いていた。
(あの、ずしっ! とくるのを感じたことがありませんか? )
 あるに決まっている。
 二人を乗せたボートは、たちまち空高く浮かび上がり、雲を超えた。

 巨大なスポーツカー型宇宙船だったボルケーナの体。
 それは無数の燃える岩石、溶岩に分裂し、天高く間をあけながら浮かんでいた。
 その間を結ぶのは、あの光線だ。
 それが今、山脈をこえる8キロメートルの高さまで広がっている。
「誰がガサツだってぇ? 」
 腕を下したボルケーナの、達美そっくりの顔。
 そこだけは光線を使わず、ボルケーニウムだけで作られていた。
 その不敵な笑い、その全身は、真っ赤なレースをふんだんに使った、裾の長いドレスを着た達美そのものだった。
「ガサツとは言ってない! パワーがありすぎて困ると思っただけです!
 ところで、チェ連の人には謝ったの? 」
 ドラゴンメイドの言葉に、ボルケーナは泣きそうな顔になった。
「謝ったよ。でも、何も聞いてくれなかった。何を言っても耳に入れないみたいだった」
 この言葉に、ドラゴンメイドは確信を持った。
 自力で考える能力を持つ人間が、それを放棄する。
 そんな恥知らずな選択を人が選ぶ状況を、生徒会は見つけた。
「じゃあ、二人に手伝ってほしいんだけど、いい? 」
 ドラゴンメイドの要望に、ボルケーナがうなづいた。
「OK! 新開発の荷電粒子ビーム工法をご覧あれ! 」
 だが、2号が止めに入った。
「まって! もうすでに要塞への突入作戦は動いてるの」
 2号が、左手首の腕時計型スマホを見せた。
 映るのは2次元バーコード。
 だが、達美にはそれで十分だ。
 本来機密のはずの、作戦士官同士が見ることのできるネットワークへのパスワード。

 第1に見つけた砲台を破壊し、非戦闘員を非難させる。これは現在実行中。
 ここにいるレイドリフトは、1号、2号、ドラゴンメイド、ワイバーン、メイトライ5。
 最後の二つに、思わず達美の顔がほころぶ。
 山のふもと、フセン市でパレードの準備をしていた部隊も、展開中。
 航空機も向かっている。
 今、宇宙空間に展開している4人のレイドリフト、ディスダイン、メタトロン、バイト、マイスターが降下を始めている。
 突入は、その後だ。