嫌いなあの子
香奈の事を可愛いと思う人だっているはずだったのだ。ここまで考えてふと思った。僕は香奈の事が好きなのか、と。他の男にとられるのなんて嫌だと。
僕はすぐに香奈の後を追った。もしかすると香奈が教室を出ていったのは告白してきた男にOKを出すためかもしれない。そうなると、二人は付き合い始めてしまう。そんなのは、嫌だ。
一年の全ての教室を覗いて、香奈を探していると、4つ目の教室に香奈はいた。誰か男と話しているようで、たぶん告白してきたその人だと思うと思わず大声を出してしまった。香奈は眼を真ん丸にしてびっくりしていた。
どうしたの? そう言おうとした香奈の声をかき消すように、僕は、香奈が好きだぁぁぁぁぁと叫んでいた。
かの一件から、学年で、いや、学校内でも知る人となった僕は、からかわれる事も何度もあったが、その度になんとかかんとかやり過ごし、結構な人気者というか、お調子者というか、そんな立ち位置のままで3年間を過ごす事になった。男友達と馬鹿やったり、先生を困らせてみたり、女子にセクハラしたり、色々とあったけど、無事に大学も受かったし、楽しくて充実した高校生活だったと今では思える。出来ることなら戻りたいとも思う。戻りたくても戻れない。過ぎ去ってから気づくことが幾つもある。だから、これからも今を大切に生きていきたい。