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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 6.

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この年、十六年四月十三日に日本政府は交渉していたソビエト連邦との日ソ中立条約を調印した。満州での治安維持と南方への進駐に北からの脅威を避けるべく続けていた結果が結実した。ロシアもドイツとの脅威に兵力を中欧に集中したかった思惑もそこにはあった。

条約調印を経て、アメリカは再び日本との軍縮交渉を開始した。日本の主張とアメリカの要求は隔たりがあり、ロシアの脅威が減った今、弱気の外交は国民の非難を浴びるとの懸念からその主張は譲られることは無かった。

四月の終わりになって、五十六は裕美子に会うために修善寺にやってきた。大きな風呂敷を携えてそれを玄関で女将に渡した。中には立派な着物と帯が入っていた。そして、裕美子殿へと書かれた手紙も添えられていた。
女将は五十六が裕美子に好意を寄せていると直感していた。若くてこの時代には少ない背も高く均整のとれた身体を見てのことだったのだろう。
幾つになっても男とはそういう生き物なんだと悲しくなっていた。

「裕美子さん、ちょっとこちらに来て」

女将は台所に呼んだ。

「はい、女将さん。なんでしょう?」

「旦那様からの手紙は読んだの?なんて書いてあったか良ければ教えてくれない?」