CBRの女
海島はいつの間にか夢を見ていた。
波打ち際をバイクで走る夢だ。どこまでも続く海岸線にて波を踏み潰し、水しぶきを上げ走る。
背中に大きなオッパイが当たる感触を喜び、後部座席の女性が股間を触る。
運転中にこらこら危ないじゃないか・・・そして、砂にタイヤを取られ転倒したところで目が覚めた。
さおりは海島の背中から股間を握って寝ていた。オッパイは夢と同じように背中で潰れていた。
ふぅ~、寝てしまってたか・・・
先ほど迄の奮闘の後だろうか、シーツはしわくちゃになり、斜めを向いて自分達が寝てるのに気がついた。さおりはぐっすり眠っている。
いつもより大きな声でヨガっていたのを海島は思い出した。
こいつとは何年だ?もう何回したんだろ?思い出そうとするがどうでも良くなって、起き上がり冷蔵庫の中のビールを取りに行った。
携帯の着信ランプが光ってるのに気がついた。見るとありさからだった。
海島はメールの中身を確認した。
「も一回、競争しようか」
そのメールが本当に競争したくて送ってきたのではないことは分かった。たぶんあいつなりの会いたいのサインなんだろう。海島はメールを閉じるとビールを冷蔵庫から取り、プルトップを押し開けた。小さく泡が勢い良く飛び出してくる。
冷えたビールが直接、肝臓に届いたかのように横っ腹に来た。うめぇ~。
半分ほど飲んで海島はベッドでヒモが切れた操り人形のように寝てる、裸のさおりのオッパイに冷えた缶ビールを当てた。
キャッ!
さおりは身体を痙攣させたように驚き、得体の知れないものから逃げようと身体を固くした。
海島は想像した通りの反応を示したので、それはそれでおもしろがった。
「何すんのよ、もぉ~」声とは別に表情は怒ってなかった。
さおりは海島に対して怒るということは絶対しないのだ。それは好きだからなのかもしれない。
「よく寝てたな」
「何時?」
「5時くらいかな」
「まだ真夜中ね」
「いや、もう朝方だよ。窓を開けるか?」
「も~ちょっと寝させて」
「もー一回しようぜ」
「ヤダ、無理!もう壊れる」
「俺の股間のバイクはビンビンだぜっ!」
さおりは冗談をいう海島の股間に手を伸ばすと
「なによ、全然、元気ないじゃない。はいはい、もうおしまい!」と言って寝返りをうち海島に背中を向けて、また寝てしまった。
そして、海島に聞こえるように
「たま~にしか会わないから、燃えるのよね~」と言った。それから続けて
「いつもいつも会ってたら、私の事とうに飽きちゃってるわよね・・・だよね・・・」
さおりは独り言で納得して、そのまま眠りについた。
海島は残ったビールを飲み干し「そうだよな~」と言えないとこが辛いよなぁ~と、妙に納得して何がおかしいのか笑い出した。言えるわけがなかった。
さおりのことを嫌いではない。むしろ、ここ最近は可愛いとさえ思えてきている。いじらしいのだ。
最初はセックスの対象としか見てなかったのだけど、何べんも肌を合わすうちに、好意を抱いている。決して無碍にしてるわけではない。たださおりが言ったように、いつも会っていたら飽きるというのに否定出来ない。多分、ずっとはいられないタイプだ。それは感覚的なもので予感のようなものでもある。そうなることがすまないという気持ちと、離れたくないという感情が入り混じっている。
セフレと言い方じゃなく、肌を合わす友達。海島にとってさおりも、友達以上、やはり恋人未満なのだ。
さおりとはホテルの前で「じゃ、またな」であっさり別れた。いつものことだ。
さおりはさおりで、どうせ振り向いてくれないしと彼女は彼女なりにあっさりして海島とは反対の方向へ歩き出した。
あぁ~、誰かちゃんとした男いないかなぁ~・・・
さおりの独り言はこの所、毎日続いてた。海島に対する気持ちは好きというのはわかっているが、セフレのように扱われると自分が惨めになる。自分の性欲を解消しただけなんだと思うことにしていた。自分の欲望のために海島をいじっている・・・そう思うことで少しは寂しさから抜けだせそうだった。