CBRの女
海島は部屋に帰ると、ビールを開け一人考えこんだ。
「俺の人生って・・・なんだろな」
多分このままじゃ、好きな事やって楽しそうに生きて、ヘラヘラ女抱いて、なんの特徴もない人生だろうな。ありさの子供の父親か・・。
海島は自分の父親を思い出した。
今では田舎でおふくろと一緒に隠居のような生活だ。ただのサラリーマンでただの年金生活者。どこが楽しかったんだか。そういう親父に反発して、生きたいように生きては見たが所詮、普通の人間だ。才を成して名を挙げるという男でもないし、ただ、誰よりも楽しそうに生きてきただけだ。
バイクのことには少々詳しい。でもただそれだけ趣味の範囲で終わってしまってる。
仕事はFREEだと言っちゃいるが、定職なしと同じだ。
女・・・女にはもててるが、これといって一生懸命にならなかった。
好きだと言ってもらえればどこへでも行くさのホイホイ男だ。
父親というのはこんなんじゃいけないんだろうな・・と殊勝に思った所にさおりからメールが入った。
「海ちゃん、遊ぼっ!」
ついこの間、会ったばかりだというのに間髪なく珍しいメールだ。
「どした?今回は早いじゃないか?」
「遊ぼ、遊ぼ、遊ぼっ!」
海島はそれが「しよう、しよう、しよう」と読めるもんだから鼻の下が伸びてしまう。
今までの癖がおいそれと抜けるはずはない。海島は
「どこで会うんだ?」とメールを入れた。
「この前の店にしようか」
「じゃ20時にOK」
それからいそいそと海島はありさの事を忘れて、身体の赴くまま支度をした。
父親になるって悩んでおいて、こんなんかっ?
海島は自分で自分に呆れ、やっぱりありさの子供の父親は無理なんじゃないかと考えた。
またしても、前夜と同じコースをたどり、海島とさおりはラブホのエレベーターを上った。
「さっきチラリと見かけたんだけど、あの客、絶対60過ぎてるよな」海島は言った。
「そう?いいじゃない。いくつになってもあれは好きなんだろうから。海ちゃんも好きでしょ?」
「ああ、そだな」そう言うと、監視カメラも構わず、ありさの胸にキスをした。
「早い、早いってば」