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「裕美子殿。昨日は興味のある話が聞けて有意義だった。しばらくは会えぬかも知れないが、女将の言いつけを守って健康に留意されよ。女将の兄上は私の上官に当たる方だ。したがって悪いようにはしないから安心して勤めよ。多くの兵士たちが出入りするやもしれぬが、軍人にくれぐれも軽はずみな話をされぬようご注意されよ。再会を楽しみにしている。
山本五十六」

そこに書かれていた内容は裕美子が想像していたような強引なものではなく、紳士として感じられる自分との関わりを喜んでくれている内容だった。
急に亡くなった父親の面影を思い出してしまった。家族と二度と会えないのかと考え始めたら、今まで緊張から閉ざされていた寂しさの感情が一気に堰を切ってあふれ出してきた。

泣き出した裕美子を見て女将は尋ねた。

「なんて書いてあったの？泣くようなことが書いてあったの？」

「いいえ、違うんです。私への気遣いが嬉しくて、家族を思いだしてしまって泣いてしまいました。すみません。もう大丈夫です」

「ううん、泣くときは泣いていいのよ。でもだからと言ってどうにもならないことだってあるの。強く生きてゆく覚悟を決めないとこれからは生きてゆけないのよ。しっかりとしてね」