司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』
八事たちアルファ分隊は、破壊目標である鉄塔に到着した。念のため、足元に転がっている敵兵2人の死を確認する。
「工兵は開門と爆弾設置を急いで。他は警戒にあたって」
『了解』
分隊の工兵が、鉄塔へのゲートを調べる。幸いなことに、警報装置は無かった。そして、安全を確認すると、かけられている南京錠を工具で破壊した。
遮音のために布で覆い隠していたが、それでも破壊音が鳴ってしまう。八事たちは警戒レベルを上げる。
『1分もあれば終わります』
工兵の少年はそう言うと、鉄塔の真下へ向かう。そこには鉄塔のコンクリート製の土台がある。
工兵は、土台のコンクリート全体を一瞥すると、服の中から小型爆弾を取り出した……。リモコン起爆式のプラスチック爆弾だ。
その小型爆弾は工兵の手によって、土台の一部に設置される。老巧化によってできたヒビの真上だ。
「設置完了!」
工兵はそう言うと、八事たちとともに鉄塔から離れていく。
『シンメイシャよりアルファ・ヘッドへ。応答願います』
物陰へ向かう八事に通信が入った。この『シンメイシャ』とは、中京都軍本司令部を示す暗号だ。
ちなみに相手は、今は亡き白鳥だ……。
八事は、すぐ近くにあるマンションの柱に隠れる。他の者たちも近くに隠れる。
「こちらアルファ・ヘッド。本分隊および他分隊、順調に任務を遂行中」
『了解しました。付近に敵車両が5台いる模様。注意してください』
すでに八事の耳は、接近する敵車両の音を聞きつけていた……。猛スピードかつ激しいスリップ音から、民間車両ではないと判断した。
彼女は、白鳥に一応のお礼を述べ、通信を終える。そして、爆破の合図を今か今かと待っている工兵に、親指を立てた……。
ドドォーーーン!!!
ガリガラガリガラガリガラ!!!
ビィーンビシビシビィーンビシビシ!!!
鉄塔の土台に設置された爆弾が爆発し、鉄塔の太い足がひしゃげる。バランスを失った鉄塔は倒れていく。そして、上空で張っていた電線はショートしながら落ちていく。飛んできたボルトなどが、八事たちが隠れている屋内駐車場を転がっていく。
ネット動画とは違い、生の迫力は凄まじかった。八事でさえも、少し驚いてしまっているほどだ。
鉄塔は川辺に倒れ、轟音を立てる。倒壊の衝撃で、地面が一瞬揺れる。
それと同時に停電が起きた。迂回の電力網があるため、10秒ほどの停電だった。あとは、その迂回の電力網を他の分隊が破壊してくれるのを待つだけだ。
作品名:司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』 作家名:やまさん