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司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』

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 ……木曽川を挟んだ反対側のスラムとは、もう雰囲気からして違っていた……。あちらのスラムが、食うか食われるかの荒んだ雰囲気で満ちていたのに対して、こちらの中京都は、豊かさに満ち溢れた雰囲気であった……。
 といっても、超高層ビルが乱立しているわけではなく、川沿いは農業地帯だ。それでも、異次元から輸入した機械や技術がフル活用されており、未来的で夢が溢れていた。生産効率重視の野菜工場や人工肉製造工場は、順調に操業しており、中京都民750万人が飢えることはまず無さそうだ。

 そんな農業地帯に挟まれた高速道路を、上社たちの車列は悠々と走る。彼らが向かう先には、中京都の中心地である名古屋がある。
 一般車両が合流し始めたため、上社たちはスピードを少しだけ落として合わせる。だが、皆スピード違反であった……。もし、うっかりミスをしてしまえば、スタントマンデビューを果たすこととなる……。

 名古屋に向けて、車列はそのまましばらく走っていたが、運が悪いことに、朝の通勤ラッシュの渋滞に巻き込まれてしまった……。いくら豊かな生活を実現できていても、ラッシュ時の混雑はなかなか根絶できないものだ。渋滞も、豊かさを象徴する存在かもしれないが。

 渋滞をノロノロと進む上社たちの車列。この分だと、名古屋市内にある基地に戻れるのは、昼頃になってしまいそうだ。まあ、特に用事があるわけでは無いので、多少遅くなっても平気だが。
 ただ上社は、渋滞の退屈さに、もうガマンできなくなったらしく、
「ねえ、八事。暇つぶしに、対ライフライン部隊の話を聞かせてくれよ」
八事に思い出話を要求した……。他に話題は持ち合わせていないのだろうか……。しかも、八事は今、渋滞中とはいえ、車を運転している身だ。

「わかった。ちゃんと最後まで聞いてくれるなら、話してあげるわ」
前方を見たままの八事が、なんとそう言ってくれた。無邪気な上社が大喜びしたのは、言うまでも無いことだろう。
 そして、八事は、運転姿勢のまま、対ライフライン部隊での思い出話を語り始めた……。