司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』
チェーンソーは、パンチャーの口に縦から突っ込んでいく。回転する刃が、ヤツの口の上下に喰いこんでいく。傷口から、緑色の血がドバドバと流れ始める。
「ガチガチガチッ! ガチガチガチッ!」
激痛に悲鳴を上げるパンチャー。
しかし、このまま負けるわけにはいかないと、ヤツは力を振り絞って、口を閉じようとする。激痛に耐えつつ、チェーンソーを破壊するつもりだ……。
パンチャーのアゴの力は、人間の頭部にブスリと頭を空けるほどなので、さすがのチェーンソーも異音を出し始めた。そして、煙も上げ始める。
「クソ! なんて馬鹿力だ!」
悪態をつきつつ、チェーンソーをしっかりと握る上社。彼の手から武器を奪おうと、パンチャーは前後左右に動いてもいたのだ。
このままでは、ヤツが力尽きる前に、上社はチェーンソーを失うことになりそうだ……。
「上社!!! それから手を離して、こっちで伏せて!!!」
八事が上社に叫んだ。店の前にいた彼女は、伏せ撃ちの構えを取っている。拳銃は、パンチャーのほうを向いていた。
「なんで!?」
「いいから!!!」
彼は彼女の言葉を信じることにした。
チェーンソーから手を離すと、大急ぎで店から飛び出す彼。そして、彼女のすぐ横にヘッドスライディングする。
パンチャーのほうは、自分の口に挟まったままのチェーンソーをなんとかしようと、もがいていた。
「何か当たったら、ごめんね」
「え?」
疑問に思う上社を尻目に、八事は発砲した……。パンチャーに向かって飛んでいく、1発の銃弾。
ドゥゥゥン!!!
チェーンソーが爆発した。着弾先は、燃料タンクだったのだ。もちろん偶然ではなく、八事の狙った通りの位置だった。
爆発によって、パンチャーも派手に四散した。固い部分はあちこちに突き刺さり、柔らかい部分はあちこちを汚く汚す……。
「…………」
店長の女性自身は無傷だった。しかし、女性は、逆に無傷では済まなかった店内を見回し、ただ絶句していた……。販促用に育て上げた草花は、爆発で燃えるか、パンチャーの体液ですっかり汚染されてしまっている。そして、大事な売り物はほとんど、爆風で壁に叩きつけられていた……。
「……爆発はやりすぎじゃないか?」
「他に方法あった?」
上社と八事は、ウィンドーショッピングでもするかのごとく、その元園芸ショップを眺めていた……。
作品名:司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』 作家名:やまさん