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司令官は名古屋嬢 第6話 『一部』

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 無駄とわかりつつも牽制のため、上社は拳銃でパンチャーを撃ちまくる。一時的に動きを止めることはでき、一定の距離を取れた。
「ガチガチガチ!」
針のように鋭いキバを鳴らすパンチャー。上社たちを、このまま見逃すつもりは毛頭ないらしい。
「強い武器が必要よ!」
大須はそう言ったものの、置き忘れの問題などから、強力な銃はここに持ちこんでいない。それはモール内にいる他の兵士たちも同様だろう。
「……銃じゃないけど、あてはあります!」
何か思いついた様子の上社。

 上社は駆け出した。もちろん逃走ではなく、目的の武器を取りにいったのだ。ときどき立ち止まっては、パンチャーに威嚇射撃をし、自分に気を引かせる。幸いなことにヤツは、大須と東山よりも先に彼を殺すつもりのようだ。キバをうるさく鳴らしながら、追いかけている。


 モール内にある園芸ショップに、上社は飛びこんだ。店長の中年女性は、騒ぎを知り、逃げ出そうとしていたところであった。そこに戦闘中である彼が、勢いよく来店したものだから、女性の顔は真っ青になる……。
「キャー!!! 出てってー!!!」
女性がそう怒鳴った直後、パンチャーがショーウィンドウをぶち破ってきた……。窓際に並んでいた最新の園芸グッズの数々が、たちまち不良品と化す……。
「コイツを借りるよ!」
彼は、女性の返事を待つことなく、壁際の棚に置かれていた商品を手にした。重そうな「それ」が、求めていた強い武器であった。

   ブルンブルンッ!!! ブルルルルルルルルル!!!

 うるさいエンジン音を放つ「しれ」は、チェーンソーであった。家庭用の小さい物とはいえ、威圧感は十分に醸し出している。もちろん、本来は伐採用だが、今はこれでパンチャーに立ち向かうのだ。
 上社は、唸るチェーンソーの先端を、パンチャーに向ける。実演販売のためか、燃料は十分に入っていた。
「ガチガチ!」
強そうな武器の登場に、ヤツは少し驚きつつも、やられまいと奮起している。
「喰らえ!!!」
上社はチェーンソーを前に向けつつ、突進していく。勇敢なものである。
「ガァー!」
パンチャーも負けじと突進する。開かれた口のキバが、照明で輝いている。
 狭い店内での一騎打ちが始まった。店長の女性は、レジカウンターの後ろに隠れている。