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恋愛偏差値 32

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病室に戻ると、見覚えのある人がいた。焦げ茶のボブヘアにスラッとしたスリムな体型の女性。
「若菜さん! 」
「楓君、こんにちは」
にこやかに手を振る彼女は渋谷 若菜(わかな)さん、渋谷先生のお姉さんだ。若菜さんは俺の姉ちゃんの同級生で、俺の異変に気付き渋谷先生の病院を紹介してもらった人だ。
「こんにちは、どうしたんですか? 」
「今日はね、楓君に話があって来たの。退院したら私の家に来ない? 」
若菜さんは俺の目を真っ直ぐ見て言った。
「……さっき渋谷先生から同じことを言われました」
「迅に……そう。楓君は、どうしたい? 」
若菜さんに言われ、俺は深く考えた。
「まあ、私の家には裕二さんがいるけどね」
若菜さんが言った、裕二(ゆうじ)とは俺の兄ちゃん。別に、兄ちゃんのことは嫌いじゃない。けど、好きでもない。
「まあ、よく考えて。私の家に来るか、迅の家に行くか。それとも家に帰るか……なんて、自分家には帰りたくないでしょうけどね」
ふいに窓から風がはいり、若菜さんの髪が右になびく。その姿は、俺の姉ちゃんに少し似ていた。

俺の姉ちゃん篠原 雪(ゆき)は、もうこの世にはいない。亡くなったのは、俺が5歳の時。姉ちゃんは高校2年生。死因は自殺、姉ちゃんが通っていた学校の屋上から飛び降りたらしい。これが原因で、俺はここにいる。
姉ちゃんが亡くなってから、母の様子がおかしくなった。姉ちゃんは、俺と兄ちゃんより母にとても愛されていた。そんな姉ちゃんがいなくなってから、母は鬱になっていった。そしてある日、俺が家に帰ったとき母は珍しく玄関にいた。いつもならリビングか庭にいるのに。母はニコニコして俺に言ったんだ。
「お帰りなさい、雪ちゃん」
俺は驚いた。けど、一番感じたのは悲しみだった。俺の存在は、母にとって息子の楓じゃない。娘の雪になったんだ。
俺はその日から、篠原 雪になった。
「そういえば、雪ちゃん髪切ったのね。服もズボンなんか履いて、まるで男の子みたいね」
母の言葉を聞いて祖母は、次の日俺にある物を渡した。それは、姉ちゃんの髪と同じ色をしたカツラと姉ちゃんが着ていた着物。渡された時、俺の存在はもうないと知った。死んだのは、篠原 雪じゃなくて篠原 楓なんだ。

「じゃあ、楓君。また明日来るわね」
「あっ……、待ってください! 俺、決めました。俺はーー 」
若菜さんの腕を掴み、勇気を出して口を開いた。
作品名:恋愛偏差値 32 作家名:時雨