「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 4.
「薪で炊いたことはありません」
「え?何で炊いていたの」
「母がやっておりましたので、知らないだけです」
とっさに裕美子はそうウソをついた。
「お嬢様だったのね。その年まで炊事をしなかったということは。羨ましい限りだわ。でもここでは一から教えますからそのつもりでね」
「はい、助かります。段取りを教えて戴ければその通りに頑張ります。慣れないことで失敗するかもしれませんが、その時は勘弁してください」
「素直なのね。気に入ったわ。そうそう、言っておかないといけないことがあるの。よく聞いてね。ここでの暮らしには大切なルールだから」
裕美子は女将から心得のようなものを聞かされると思っていたが、違っていた。それは自分の中の常識とは少し異にする内容のものだった。
「女将さんの言われることは必ず守りますのでお聞かせください」
作品名:「もう一つの戦争」 舞い降りた天使 4. 作家名:てっしゅう