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熾(おき)
熾(おき)
novelistID. 55931
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月のあなた 上(3/5)

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「おまえら、大体見て回った?」

 晶は緊張も遠慮も無く話し続ける。
 日向は、なんとなく毒気が抜かれた。
「まあ、だいたいね」
「図書館、武道館、劇場は?」
 と法子。
 これには蜜柑が答える。
「武道館と劇場は最初に行ったよ。図書館はまだかな、クラスに近くて戻るのに便利だから、最後にしようと思って」

「私たちも同じ考えなの」
「一緒だな。じゃさ、ウチのクラス行った?」

「「あ」」

 盲点だった。
 たしかに吉田も教員である。
 この時間、なにがしかの自己テーマに基づき、1―Aで講義を行っている筈だ。

「担任、いったいどんな授業してるのか、見たくない?」

「あ――」

 ”そんな男関わるな。”

「…べつに」

 日向が肩をすくめると、晶は口をへの字に曲げる。

「委員長、ノリ悪いな!」
「あ…でも、エクスプローラってカリキュラム関係ないんだよね。だと、先生が普段何考えてるのか、わかるかも」
 あの人意味不明だから、とまでは云わなかった。
「大甘堂、鋭い!」
 晶が人差し指で指した。

「敵を知れば…とも言うよね」
「べつに、敵じゃないよ…ただの教師じゃん」
 なおも日向は乗り気でない様だったが、
「だろ? じゃ、いこーぜー!」

 晶の勢いに押されて、しぶしぶ立ち上がる。
蜜柑も法子に促された。

「でも、なんでそのためにわたしたちを誘うわけ?」
「だって、こえーじゃん!」

 晶はけらけら笑った。