月のあなた 上(2/5)
日向はちらりと隣の席に座っている蜜柑を見た。
すると蜜柑も、自分の方を見ていたことが分かった。
目が合った二人は、お互いに何となく微笑んだ。
それでまた何となく照れくさくなって、二人ともタブレットに目を落とす。
よし、と日向は思った。
うん、と蜜柑は決めた。
「次は男子のクラス委員を決める。立候補者は――」
顔を上げた吉田が声を切って初めて、クラスはその手が挙がっていたのに気付いた。
それくらい、音の無い自然な動作だった。
「水凪か。理由は?」
「いつもやっていて…落ち着くので」
なるほどそうですよね、と皆が思った。
作品名:月のあなた 上(2/5) 作家名:熾(おき)