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風来坊旅日記 第二話

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「旦那さま用心棒のかたがこられました。」
「私が主の大黒屋藤兵衛でございます。」
「梁田宗八と申します。宜しくお願いいたします。」
「早速仕事を頼んでもいいかい?」
「はい、構いません」
「今からご家老様のお屋敷にいく、警護を頼むよ。」
「分かりました。」
「吾平荷物の仕度はできてるか?」
「はい出来ております。」
「では、出掛けてくるよ。治郎あとは頼んだよ。」
「旦那様いってらっしゃいませ。」

宗八は手代の吾平と藤兵衛のお供で出掛た。
とくに襲われる事などなく家老の家に着いた。
「大黒屋藤兵衛だ空けとくれ」
「はい、只今」
門番が中に招き入れた。
屋敷の中で待っているとほどなく家老が現れた。
「おう藤兵衛か今日はなに用じゃ?」
「用心棒を手配してまいりました。」
「おう、そのほうが用心棒か」
「梁田宗八と申します。」
「おう、宗八か宜しく頼む」
「なんの事でございますか?」
「藤兵衛、この者に何も伝えてないのか?」
「事が公になっては困りますので何も伝えておりませぬ」
「おう、それもそうだな、ではわしから説明しよう。」
「ご家老さまその前にいつものものでございます。」
「さすがは藤兵衛ぬかりがないな」
「はい、ご家老様あっての我が身ですので」
「では、本題に移ろう。宗八にはわしの警護をしてもらう」
「ご家老様のですか?」
「左様、詳しくは申せぬがわしは近々襲われる事になる、その時助けてくれればよい」
「分かりました。」
「して、藤兵衛例の件はどうなっておる?」
「それでしたら明日実行する手筈になっております。」
「そうか、分かった。首尾よく頼むぞ。」
「かしこまりました。」
宗八はそのまま家老の屋敷に残り、藤兵衛は帰っていった。

翌朝、
信之丞は道場で伊助、佐助、権兵衛に稽古をつけていた。
「伊助、そこから攻めに転じるのだ」
「はい」
「佐助は受け流す練習だ」
「はい」
「権兵衛は攻めずに守りを固めろ」
「はい」
一時間ほどして、
「それでは、練習の成果を試すために俺と立ち合いをしよう。」
「まずは権兵衛」
「はい」
「おお上手くなったなその調子だ」
「はいありがとうございます」
「次、佐助」
「はい」
「俺が打ち込む受け流してみよ」
「はい」
「いい感じだそのまま続けろ」
「はい」
「最後は伊助」
「はい」
「伊助は攻めに転ずる頃合いを考えながらこい」
「はい」
「よしこの調子だ」
「はいありがとうございます」
「よし一旦休憩しよう」
信之丞たちは休憩していた。
その時どこかの道場の門弟らしき若者達が木刀をもってはいってきた。
「まだこの道場つぶれてなかったのか」
「人少ねえのによくやるよ。」
権兵衛が立ちはだかる
「なんだお前たちは、何しにきた?」
「雑魚は引っ込んでろ」
権兵衛は蹴り飛ばされてしまった。
伊助と佐助が権兵衛に歩み寄る、
「権兵衛大丈夫か?」
「はい、なんとか」
伊助が
「お前らどこのもんだ言わないと只ではすまぬぞ」
若者の一人が
「正直にいうやつがどこにいるんだよばーか」
その言葉を聞き終わる前に伊助は竹刀を取りに道場に入った。
それをみて信之丞も異変に気づく。
信之丞が
「お前らここでなにしてる?」
「ちょっと暴れにきただけだよ」
と、木刀を振るい始めた。
当たったらちょっとの怪我ではすまない。
信之丞は竹刀を手にして、伊助たちを避難させようとしたが木刀が伊助に当たってしまった。
しかも利き腕である。
すぐ、信之丞が竹刀で木刀を叩き落とし、一人目の胴に一発。
続いて、木刀を構えたところに小手、面。
三人、四人と倒した。
最後に後ろから現れたは伊助が見知った人物だった。
「信之丞さんそいつは家老の息子がいる道場のものです。」
「やはりそうか」
「今日はこれでひく覚えてろよ」
と若者達は去っていった。
「伊助大丈夫か?」
「はい、かすり傷です。」
その様子を見ていた新左衛門は何も言わず裏口から出ていった。
行き先はもちろん家老のところである。

宗八は家老の屋敷にいた。
すると慌ただしく人が入ってきた。
「大変でございます」
「何事じゃ」
「しくじりましてございます。」
「なに?あんな雑魚にやられたのか?」
「いえ、むこうには強者がおりまして」
「こちらの手が読まれていたか、新左衛門めやりおるわ」
「いかがいたしますか?」
「やむをえん、新左衛門の事じゃこちらに向かっていよう」

ほどなく新左衛門が屋敷にきた。
「大庭、大庭でてこい。」
「なんだ新左衛門ではないか何しにきた」
「とぼけるなうちの道場を襲ったのはお前の仕業だろ?」
「何を言ってる身分をわきまえろ」
「大庭お前だけは許さん」
「宗八頼む」
「分かりました。」
「お前は関係ない大庭をだせ。」
「そうはいきません、拙者は用心棒ですので、」
「したかないか、手加減は出来ぬぞ」
「望むところです。」
新左衛門は宗八と戦い始めた。
大庭は宗八の実力を知らない。
時間稼ぎが出来ればいいというくらいしか思っていない。
そのため大庭はその場を逃れ大黒屋に向かった。
宗八が負ける事を見越して、大黒屋にやくざものを集めさせていた。
取り越し苦労という事を大庭は知らない。

新左衛門は刀を抜き、間合いをとる。
宗八も刀を抜いた。
お互い実力を知らない。
信之丞と宗八が知り合いだということも信之丞と新左衛門が知り合いだということも知らないのである。
新左衛門は下段に構え、じわりじわりと間合いを詰める。
宗八は一定の間合いを保つ。
新左衛門は相手からの攻撃をかわして一気に攻めこむタイプである。が宗八は打ち込んでくるタイプではない。一定のの間合いがなかなか詰まらない。
新左衛門は焦っていた。宗八を倒さないと先には進めない。が宗八は一向に攻撃をしてこない。
新左衛門はしびれを切らし自分から打ってでる。
一気に間合いを詰め一太刀振るった。
だが宗八はなんなく受け流した。
二の太刀、三の太刀と新左衛門が攻撃するが宗八は受け流す。
冷静な状態で信之丞と互角か少し劣る新左衛門だ、冷静さを失っている新左衛門は宗八の敵ではない。が無駄な殺生を好まない宗八は、全て受け流し、相手が疲れるのを待った。
宗八はお金さえもらえればいい。新左衛門を殺したところで貰える金は変わらないなら殺す必要はない。
そうこうしてるうちに新左衛門は少し疲れてきたのか間合いとり攻撃を一旦やめ、間合いをとった。新左衛門は思う、
「こいつは信之丞と同じくらい強いな、参った、どう攻めようか、」
反対に宗八は、
「最初は焦っていたがしだいに冷静さを取り戻してくるあたりなかなかできるな」
とお互いにお互いを認めていた。
間合いをとったまま、いると誰か近づいてくる気配がした。
新左衛門は
「新手か?今こいつ以外に増えるのは面倒だ、こいつだけでも勝てるかわからないのにどうしようか」
と、思った。
がすぐに違うと分かった。
「新左衛門殿、新左衛門殿、」
声を聞いて二人とも声の主が分かった。
「新左衛門殿ここでしたか、あれ宗八もいる一体どうなってるんだ?」
「宗八?信之丞殿の知り合いか?」
「はい、私の連れです。宗八ここで何してるんだ?」
「決まってるだろ仕事だよ。」
作品名:風来坊旅日記 第二話 作家名:緑茶