風来坊旅日記 第二話
浦上信之丞と梁田宗八の二人旅が始まった。
二人は北陸を目指し旅をすることにした。
北陸にいた剣豪は中条流の富田勢源と一刀流の伊藤一刀斎。
中条流と一刀流は共に塚原卜伝が創始した新当流からでた流派である(諸説あり)
戦国時代を代表する流派の1つと言っていいだろう。
塚原卜伝についてはまた他の回で触れる。
中条流は北陸を中心に広まった流派である。
一刀流は伊藤一刀斎が考えだした流派である。
信之丞と宗八は陸路を日本海に向け出発。
まず伯耆に入った。
ここでは宿をとるだけ、まだ旅費には余裕がある。
そのまま、伯耆を後にし、但馬に向かう。
但馬も宿をとるだけ、次に丹後に向かう。
丹後に来るころには旅費がなくなってきていた。
丹後に着いた二人はまず天橋立へ向かった。
「これが有名な天橋立か」
「いい景色だな。」
「城下町にいき、まず仕事を探そう。
「そうだな」
二人は城下を目指した。
丹後の城下に入り仕事を探す。
二人は口入れ屋にいき、信之丞は助っ人を、宗八は用心棒の仕事を探した。
運よく二人とも仕事を見つけた。
信之丞はとりあえず道場の助っ人を住み込みという理由で選んだ。
宗八は商人の用心棒の仕事に決めた。
二人は5日後に待ち合わせる事にした。
信之丞は言われた通り道場に向かった。
「口入れ屋の紹介で参った浦上信之丞と申します」
すると、道場から人が出てきた。
「御待ちしてました。どうぞ中へ」
「かたじけない」
中に入ると立派な道場があった。
「まずは貴殿の腕を知りたい立ち合いよろしいか?」
「あい分かった」
信之丞は荷物をおき、竹刀を手にした。
「若い門弟がまずお相手いたす。」
「分かりました。」
歳は18くらいだろうか門弟が竹刀をもって現れた。
「はじめ」
声と同時に門弟は信之丞に向かってきた。
信之丞はなんなく交わし、竹刀を向ける。
門弟はそれでも信之丞に向かってくる。
信之丞は門弟がだした竹刀を振り落とし、喉元に寸止め。
「勝負あり」
「参りました」
若い門弟は下がっていった。
「次は私がお相手いたす。」
審判をしていた師範代が名乗りをあげた。
師範代はこの道場で一人だけのようだ。
「私はこの道場の師範代島田伊助と申します」
「よろしくお願いします。」
門弟が
「はじめ」
と号令すると門弟とはうってかわって間合いを詰めない伊助。
信之丞も間合いをとっている。
信之丞がじわじわと間合いを詰める。
伊助はそれを嫌って間合いを離す。
が、信之丞が打ちにいく、伊助はこれを竹刀で受ける。
信之丞はすかさず二の太刀を入れるこれも竹刀で受ける。
信之丞は悟る。
「この伊助は守りに徹し、相手の隙をつくのが狙いだ」
と、そこで信之丞はわざと隙を作るように大振りで伊助に迫る、待っていたように伊助から攻めてくるが信之丞はこのときを逃さない、大振りの竹刀の軌道をかえ、伊助の攻撃を払い、すかさしずまわりこんで、胴に寸止め、
「参りました。」
「伊助殿の守りはなかなかでした。」
「私の唯一の得意な分野でして、ただ攻めるのが苦手です。貴殿の実力は充分に分かりました。さあ奥にどうぞ」
「失礼いたす」
「ここに寝て下さい。」
「助っ人とは一体なんの?」
「はい、明後日この地域の道場が集まって試合を行います。」
「それで?」
「はい、道場が4つあるのですが、うちの道場が一番ちいさく、門弟もおりません、それを良品残りの3つの道場からやめてしまえと罵りを受けているのです。」
「なるほどして道場の主はどこに居られるのだ?」
「ただ今外出しております。」
「そうか、話を進めてくれ」
「はい、3つの道場にはそれぞれ、殿様の家臣の次男や三男がおりまして、それに付け入ろうする輩で道場に人が集まります。実力はうちの師範に比べれば劣るのですが、親が圧力をかけてくるのです。」
「なるほど」
「師範は言わせとけばいいと言うのですが門弟がそれを怖れてやめていくのです。今いるのは先ほど戦った権兵衛と私の弟の佐助と私と師範、四人だけです。前はもっといたんです。この辺では一番の道場でしたから」
「そういう事か」
「そこで助っ人を頼みなんとか人数合わせをと思いまして。」
「分かった」
道場の師範が帰ってきた。
「助っ人に参りました浦上信之丞と申します。」
「貴殿が助っ人か宜しく頼むぞ。伊助、立ち合いはしたのか?」
「はい、私の完敗にございます。」
「そうか、どうじゃわしと手合わせせぬか?信之丞殿」
「はい、お名前を伺って宜しいですか?」
「これは失礼いたした私はこの道場の主の村上新左衛門と申す」
「新左衛門どの宜しくお願いいたします。」
「ではどっからでもかかって参れ」
新左衛門は下段の構えをとる、一見攻められそうだが動きに無駄がない。
信之丞はじわりじわり間合いを詰めるがある一定の距離になると踏み出せない。
新左衛門の間合いに入ると打ち込まれると信之丞は悟ったのだ。
が、伊助同様に守りが硬い新左衛門に勝つには攻めるしかない。
信之丞は間合いをある程度詰め一太刀振るう、新左衛門はこれを軽く受け止める。
新左衛門は伊助より数段受けるのが上手い。
信之丞は隙を見せないよう何度も攻めたが、ぜんぶ受け流されてしまった。
信之丞は思う「伊助同様新左衛門は攻めてこないのか」と
だが考えは外れた。信之丞の集中力が切れかかった瞬間新左衛門が打ってきた。
信之丞は受けるのがやっと、新左衛門に攻められ続けた。
だが、集中力を取り戻した信之丞はこれをしだいに受け流し、交わしていく、それをみた新左衛門は攻めるのをやめた。新左衛門は信之丞を認めたのだ。
「よし、今日はこれまでにしよう」
「ありがとうございました」
「明日は伊助と佐助と権兵衛に稽古をつけてやってくれ。」
「分かりました」
「よし飯の準備じゃ」
伊助と佐助は家に帰っていった。
権兵衛は住み込みで稽古をしている。
ご飯の支度も権兵衛の仕事だ。
「貴殿は強いな」
「いやいや新左衛門様には敵いません」
「謙遜しておるな、まあよい」
「頂きます。」
門弟が少ないのによくやっていけるなっと信之丞が思っていたら新左衛門が語りだした。
「私は元藩に勤めていたものだ。殿の剣術指南をしておった。だが家老とつまらない事で揉めてしまい、職をとかれた。だが私が悪い訳ではないと殿から給金を頂いている。それで今生活が出来ている。実は今回の道場の試合にその家老の息子がでるのだ。家老は私をよく思っていない。私との揉めごとがきっかけで次席の地位を失った。今は家老とは名ばかりになっている。息子を殿に取り立ててもらおうと必至なのだ。そのためには我らは邪魔なはずなにか仕掛けてくるかもしれぬ」
と、新左衛門が胸の内を明かした。
信之丞は自分の役割を把握した。
伊助、佐助、権兵衛を守るのが仕事だと分かった。
もちろん新左衛門も守ると決めた。
一方宗八は商人の用心棒の仕事をしに、店の前に来ていた。
用心棒と言っても色々ある身辺警備みたいなものする人、荷物を運ぶ際にもの取りに教われないための警備、など様々である。
何をするのか考えたが、金が稼げればなんでもいっかと店に入った。
「失礼します。口入れ屋から紹介されてきました。梁田宗八と申します。」
二人は北陸を目指し旅をすることにした。
北陸にいた剣豪は中条流の富田勢源と一刀流の伊藤一刀斎。
中条流と一刀流は共に塚原卜伝が創始した新当流からでた流派である(諸説あり)
戦国時代を代表する流派の1つと言っていいだろう。
塚原卜伝についてはまた他の回で触れる。
中条流は北陸を中心に広まった流派である。
一刀流は伊藤一刀斎が考えだした流派である。
信之丞と宗八は陸路を日本海に向け出発。
まず伯耆に入った。
ここでは宿をとるだけ、まだ旅費には余裕がある。
そのまま、伯耆を後にし、但馬に向かう。
但馬も宿をとるだけ、次に丹後に向かう。
丹後に来るころには旅費がなくなってきていた。
丹後に着いた二人はまず天橋立へ向かった。
「これが有名な天橋立か」
「いい景色だな。」
「城下町にいき、まず仕事を探そう。
「そうだな」
二人は城下を目指した。
丹後の城下に入り仕事を探す。
二人は口入れ屋にいき、信之丞は助っ人を、宗八は用心棒の仕事を探した。
運よく二人とも仕事を見つけた。
信之丞はとりあえず道場の助っ人を住み込みという理由で選んだ。
宗八は商人の用心棒の仕事に決めた。
二人は5日後に待ち合わせる事にした。
信之丞は言われた通り道場に向かった。
「口入れ屋の紹介で参った浦上信之丞と申します」
すると、道場から人が出てきた。
「御待ちしてました。どうぞ中へ」
「かたじけない」
中に入ると立派な道場があった。
「まずは貴殿の腕を知りたい立ち合いよろしいか?」
「あい分かった」
信之丞は荷物をおき、竹刀を手にした。
「若い門弟がまずお相手いたす。」
「分かりました。」
歳は18くらいだろうか門弟が竹刀をもって現れた。
「はじめ」
声と同時に門弟は信之丞に向かってきた。
信之丞はなんなく交わし、竹刀を向ける。
門弟はそれでも信之丞に向かってくる。
信之丞は門弟がだした竹刀を振り落とし、喉元に寸止め。
「勝負あり」
「参りました」
若い門弟は下がっていった。
「次は私がお相手いたす。」
審判をしていた師範代が名乗りをあげた。
師範代はこの道場で一人だけのようだ。
「私はこの道場の師範代島田伊助と申します」
「よろしくお願いします。」
門弟が
「はじめ」
と号令すると門弟とはうってかわって間合いを詰めない伊助。
信之丞も間合いをとっている。
信之丞がじわじわと間合いを詰める。
伊助はそれを嫌って間合いを離す。
が、信之丞が打ちにいく、伊助はこれを竹刀で受ける。
信之丞はすかさず二の太刀を入れるこれも竹刀で受ける。
信之丞は悟る。
「この伊助は守りに徹し、相手の隙をつくのが狙いだ」
と、そこで信之丞はわざと隙を作るように大振りで伊助に迫る、待っていたように伊助から攻めてくるが信之丞はこのときを逃さない、大振りの竹刀の軌道をかえ、伊助の攻撃を払い、すかさしずまわりこんで、胴に寸止め、
「参りました。」
「伊助殿の守りはなかなかでした。」
「私の唯一の得意な分野でして、ただ攻めるのが苦手です。貴殿の実力は充分に分かりました。さあ奥にどうぞ」
「失礼いたす」
「ここに寝て下さい。」
「助っ人とは一体なんの?」
「はい、明後日この地域の道場が集まって試合を行います。」
「それで?」
「はい、道場が4つあるのですが、うちの道場が一番ちいさく、門弟もおりません、それを良品残りの3つの道場からやめてしまえと罵りを受けているのです。」
「なるほどして道場の主はどこに居られるのだ?」
「ただ今外出しております。」
「そうか、話を進めてくれ」
「はい、3つの道場にはそれぞれ、殿様の家臣の次男や三男がおりまして、それに付け入ろうする輩で道場に人が集まります。実力はうちの師範に比べれば劣るのですが、親が圧力をかけてくるのです。」
「なるほど」
「師範は言わせとけばいいと言うのですが門弟がそれを怖れてやめていくのです。今いるのは先ほど戦った権兵衛と私の弟の佐助と私と師範、四人だけです。前はもっといたんです。この辺では一番の道場でしたから」
「そういう事か」
「そこで助っ人を頼みなんとか人数合わせをと思いまして。」
「分かった」
道場の師範が帰ってきた。
「助っ人に参りました浦上信之丞と申します。」
「貴殿が助っ人か宜しく頼むぞ。伊助、立ち合いはしたのか?」
「はい、私の完敗にございます。」
「そうか、どうじゃわしと手合わせせぬか?信之丞殿」
「はい、お名前を伺って宜しいですか?」
「これは失礼いたした私はこの道場の主の村上新左衛門と申す」
「新左衛門どの宜しくお願いいたします。」
「ではどっからでもかかって参れ」
新左衛門は下段の構えをとる、一見攻められそうだが動きに無駄がない。
信之丞はじわりじわり間合いを詰めるがある一定の距離になると踏み出せない。
新左衛門の間合いに入ると打ち込まれると信之丞は悟ったのだ。
が、伊助同様に守りが硬い新左衛門に勝つには攻めるしかない。
信之丞は間合いをある程度詰め一太刀振るう、新左衛門はこれを軽く受け止める。
新左衛門は伊助より数段受けるのが上手い。
信之丞は隙を見せないよう何度も攻めたが、ぜんぶ受け流されてしまった。
信之丞は思う「伊助同様新左衛門は攻めてこないのか」と
だが考えは外れた。信之丞の集中力が切れかかった瞬間新左衛門が打ってきた。
信之丞は受けるのがやっと、新左衛門に攻められ続けた。
だが、集中力を取り戻した信之丞はこれをしだいに受け流し、交わしていく、それをみた新左衛門は攻めるのをやめた。新左衛門は信之丞を認めたのだ。
「よし、今日はこれまでにしよう」
「ありがとうございました」
「明日は伊助と佐助と権兵衛に稽古をつけてやってくれ。」
「分かりました」
「よし飯の準備じゃ」
伊助と佐助は家に帰っていった。
権兵衛は住み込みで稽古をしている。
ご飯の支度も権兵衛の仕事だ。
「貴殿は強いな」
「いやいや新左衛門様には敵いません」
「謙遜しておるな、まあよい」
「頂きます。」
門弟が少ないのによくやっていけるなっと信之丞が思っていたら新左衛門が語りだした。
「私は元藩に勤めていたものだ。殿の剣術指南をしておった。だが家老とつまらない事で揉めてしまい、職をとかれた。だが私が悪い訳ではないと殿から給金を頂いている。それで今生活が出来ている。実は今回の道場の試合にその家老の息子がでるのだ。家老は私をよく思っていない。私との揉めごとがきっかけで次席の地位を失った。今は家老とは名ばかりになっている。息子を殿に取り立ててもらおうと必至なのだ。そのためには我らは邪魔なはずなにか仕掛けてくるかもしれぬ」
と、新左衛門が胸の内を明かした。
信之丞は自分の役割を把握した。
伊助、佐助、権兵衛を守るのが仕事だと分かった。
もちろん新左衛門も守ると決めた。
一方宗八は商人の用心棒の仕事をしに、店の前に来ていた。
用心棒と言っても色々ある身辺警備みたいなものする人、荷物を運ぶ際にもの取りに教われないための警備、など様々である。
何をするのか考えたが、金が稼げればなんでもいっかと店に入った。
「失礼します。口入れ屋から紹介されてきました。梁田宗八と申します。」
作品名:風来坊旅日記 第二話 作家名:緑茶