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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 11

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「えっと、あのう」

なぜかもじもじする彼女の名前を呼ぶ。

「氷雨」
「嬉しい!ちゃんとわたしだってわかるのね!」
「ぐわっ」

ガシャーン!
レースのスカートの裾を翻し、氷雨が清瀬に飛びついた。その衝撃に、清瀬は椅子とともに後ろにひっくり返る。

「ご、ごめんなさい…」
「アイタタ…いいよ」
「ずっとこうしたかったの。清瀬さん」
「そうか」

抱き付かれる。押し付けられる柔らかな胸の感触と甘い匂いに、ちょっと戸惑う。しかししがみついてくる腕の細さに、彼女の負った役目の重みを思い出し、その身体を受け止めてやった。
ずっと母親代わりとして、旭と涼太を守ってきた氷雨。旭の中の理想の母親像が形を持った彼女。清瀬の妹の前で姿を現したこともあったっけ。

「清瀬さんありがとう…旭を助けてくれて…」

氷雨は顔をあげて、そういった。優しく微笑みながら。

「ケガさせちゃってごめんね。痛かったでしょ?」
「平気だよ」
「…一弥がね、あんなふうに思ってるなんて知らなかった。ずっと一人で、心に秘めてたものがあったんだね」

目を伏せて、彼女はくちびるをかむ。悔しそうだ。気づいてやれなかったと、己を責めているのだろうか。

「でも清瀬さんには、一弥の声が届いてたんだね。わたしはそれが嬉しいの」

生きたい。
あの言葉がなければ、清瀬は立ち上がれなかったと思う。彼らが新たなに罪を重ねることを、止めることもできなかっただろう。

「最初はあなたのこと、わたしたちの秘密を崩す悪い奴だって思ってた。でも清瀬さんに出会えなかったらって思うと、今はもう、怖いよ」
「……」
「芽衣にだけ罪を着せるわけにはいかないから…旭だって罪に問われる。わたしたちのことが世間に明るみになるのも時間の問題。これからも、あの子は平穏無事に暮らしていけるわけじゃないのね」

作品名:慟哭の箱 11 作家名:ひなた眞白