慟哭の箱 11
「一弥が…」
「うん?」
「一弥も、清瀬さんに会ったんですね…」
だって。
「もう、俺の心に檻はない。一弥を閉じ込めていた箱も。それがわかるんです。清瀬さんが、あそこから一弥を連れ出してくれたんだって…」
一弥の思いが、自身のことのようにわかる。解き放たれたのだと。うずまく不安や、どうしようもない絶望に風穴があいて、光が差し込んでいるのがわかるのだ。
「おかえり」
ずっと聞きたかった言葉。二度と戻らない覚悟で清瀬の部屋を出たあの時、二度と聞けないのだと思っていた言葉。
静かに目を閉じて反芻する。
こみあげてくるいろんな感情をこらえ、旭は、一弥は答えた。
「ただいま、清瀬さん」
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