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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 11

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夢枕



ウソだ、いやだ。
野上は怒りに似た気持ちで廊下を駆ける。
須賀旭を無事保護、武長は確保。捜査官に朗報を聞いたのち、旭が昏倒したことと清瀬が負傷したとのしらせが届いた。病院の場所を強引に聞きだし、野上は主治医の立場を利用して捜査員の車に飛び乗った。

(須賀くん大丈夫なの…?清瀬さんの怪我って何…?)

詳しい情報は得られないまま、野上は車内でざわつく心を必死に整える。どうか二人とも無事でいてくれ。それ以外のことを考えられない。

何があったの?無茶をしたの?
旭はおそらく、過去を清算しようとしたのだろう。そこで過去と向き合い…そしてどうなったのだろう。繊細な心たちを思うと、野上は不安でたまらなくなる。

武長は逮捕された。だけど、旭の苦悩は続く。過去の傷と、自らの罪と、人格たちとの今後。待ち受けている長い人生。それでも、あの子には生きていてもらいたい。いつか笑って暮らす日が、ちゃんと待っているって信じてほしい。だからどうか無事でいて、戻ってきて。

そして清瀬に対しては。

(怪我ってなによ。どんくさいことしてんじゃないわよバカ!)

心配というよりも怒りがこみあげてくる。なにやってんんだ、と。
人間、心配が大きくなると相手に対して腹が立つというが、自分はまさにその状況だ。

怪我ってどの程度?入院が必要な?またちゃんと、へらへら笑ってくれないと困る。

(そうよ、困る…)

あのひとがいないと、わたしは困る。とても。
だって。

作品名:慟哭の箱 11 作家名:ひなた眞白