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The SevenDays-War(黒)

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 ルドラは人間に姿を変えて王都エルセントに降り立った。人目のない路地裏で姿を実体化させ、表通りへと向かう。黒剣はいままでと同様に背中に括り、黒天馬はただの黒い馬に擬態させてある。
 以前に間近で見た人間を参考にして、肌と髪の色も変化させる。 浅黒い肌に黒い短髪、そして黒い瞳という容姿は、人並みに自然に溶け込んでいる。
 ただ、ルドラは体の大きさを間違えていた。
 その大きさに、道行く人々は皆、足を止めてルドラを見上げた。
 二メートルの巨体に、真っ黒の巨馬。この組み合わせが目を引かないはずがない。
 千年もの間ずっと黒一色だったルドラは、黒以外の色を身につけることを無意識に避けていたのだ。そのため、身に着けている服や鎧も、すべてが黒で統一されている。
「とりあえずは魔界の波動を目指すか」

 ルドラは「我、関せず」とばかりに王都を歩いた。
 自身が頭一つ抜け出ていることには気付いていたのだが、胸までの大きさの人間もいれば、膝までの大きさの人間もいる。大小様々あるのだろうと思い、あまり気に止めなかった。
 ルドラは空から見下ろすばかりで、人間の生態には全く興味がなかったのだ。

 波動を追い北へ。
 気付けば街の外へ出る門があり、その先は草原になっていた。波動はさらに北から発せられていた。
「移動しているのか」
 これならば人間に化ける必要などなかった、と舌打ちする。
「待て待て待て! そこのデカイの!」 
 どこからともなく湧いて出た鎧兜の人間たちが、わらわらとルドラを包囲する。
 若い騎士がルドラの正面に進み出る。
「お前、どこから入った? 東西南北のどの門兵も、お前の姿を見掛けていない。そんな馬を連れてたら、誰かが覚えているはずだ」
 若い騎士は、ルドラの巨体を見上げながら口を開く。若さが持つ正義感と責任感が、恐怖心を上回っているのだろう。対して、ルドラを囲む若い騎士以外の衛士たちは、やや腰が引けている。
「騒がせてしまったのならば詫びよう。この街に用はなかった。」
 魔界の波動は急激に速度を増し、北へと遠ざかっている。
「少し急いでいる。通してくれるか?」
「そうは行かない。先刻、この門よりサンク卿がご出立なされたばかりだ。怪しい者を続けて出すことはできない」
「サンク卿? 誰だそいつは?」
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近