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The SevenDays-War(黒)

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「ルドラよ、少し面倒なことになった」
「面倒とは?」
「人間が牢獄の扉を開けようとしている」
「まさか!?」
 人間に開けられるものならば、自分が疾うの昔に開けている。そんな思いがルドラの平静を瞬時に奪い去る。
「驚くのも無理はない。とはいえあの程度の術法では開きはしないが、万が一ということもある。念には念を入れ、不穏の芽は摘み取っておく。ルドラよ、行っておくれ」
「仰せのままに」

 ルドラは黒天馬に跨る。
 目的地は、人間がエルセントと呼ぶ、多くの人間が集まり賑わいを見せている場所だ。単純な規模であれば大陸一だろう。一度は灰になった世界からの復興を思えば、感慨深いものがある。だがそれは、そこに住まうのが自分の眷属ではないことを除けばの話だ。
 ルドラは、繁殖力だけが取り柄の人間を見る度に虫唾が走るのだ。

「千年の永きを費やして得たものが、よもや頭数だけとは」
 ルドラが何度となく繰り返してきた言葉。この千年で変化したのは年数を示す数だけだ。
『強くあろうとしない者に守る価値などなく、弱き者に掛ける情けなどない』
 それがルドラの揺るぎない理念であり、信念である。


 ―― ここら一帯を焦土に変えてしまえば簡単ではないか

 ルドラはエルセントを見下ろしながら黒剣の柄を強く握った。だが、それが許されていれば、千年もぼやき続けたりはしていない。

「一応、見ておくか」
 振り上げた黒剣を納めたルドラは、自身の自尊心を守るため呟く。
 だがルドラは実際に、人間がどのような方法で“扉”を開けようとしているのかに興味を抱いていた。
 “扉”を開けるほどのものならば、ギリギリで見逃してやってもいい。いい警告になるだろう。「気をつけろ、監視されているぞ」と教えてやるのだ。
 幼稚なものであればその場で灰にしてやろう。「無駄な努力である」と。
 もしも完成寸前であれば、手を貸してやってもいい。開かれた扉から出てきた者たちとの戦いを楽しんだ後、見返りとして苦しまぬように一瞬で灰にしてやろう。

 ルドラは、『牢獄の扉が開く』などという万一つも起こり得ない状況を想定した自分を嘲笑った。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近