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The SevenDays-War(黒)

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(終) 神の敵と神の剣


「森の奥地に入れば、外敵を排除する結界が働くんだよ。アタシが捕まったのはその結界の外に出ちゃったからなんだ」
 ユノフィアは悔しそうに言った。

 黒天馬にはユノフィアとウマの二人が乗り、ルドラは手綱を引いていた。その速度だと、森に入るまでに四日ほど掛かる見込みだ。
  三人が乗ったとしても、黒天馬ならば数時間でたどり着けるのだが、敢えてそれをしていない。
 ルドラは追手を待っているのだ。
 エルセントからやってくるサンクの放った追手ではない。待っているのは、神の放った追手だ。
 魔界から“神の敵”を召喚するウマの存在は、統治神にとって脅威そのものだ。そんな彼女を連れ歩くルドラの行動に気付かぬはずがない。脅威を取り除くため、相応の実力を持った刺客を差し向けてくるはずだと考えていたルドラは、その戦場に向かっていたに過ぎない。
 ルドラは強敵との戦いを条件に、従属する契約を結んだ。だが、戦いの機会は与えられることなく、それはこれから先も変わらない。
 千年前、守りきれなかった自国の民が生き残っていることを知った。強敵との戦いを得る方法も手に入れた。
 最早、ルドラに統治神を主と仰ぐ必要はない。
 世界の支配者になるつもりなど毛頭ない。魔界という名の牢獄に幽閉された同胞を、同胞だけではない、古代神と呼ばれるすべての者を開放し、世界をあるべき本来の姿に戻すだけだ。

 黒が現れた。
 それはあまりにも唐突に。何の前触れもなく。
 黒よりも黒い、漆黒。
 炎のような妖気を身に纏った闇の騎士。
 ルドラと同じ、黒炎の騎士。

「ユーノ、森に帰ったらポポマの長に伝えてくれ」
 ルドラは人間への擬態を解除する。
 その姿が、黒い甲冑に身を包んだ黒炎の騎士へと変貌してゆく様子を、ユノフィアはじっと見届ける。
「国を守れなくてすまなかった、と」
「必ず」
 黒天馬はユノフィアの返事を合図に高く嘶きを上げ、空へと駆け上がった。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近