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The SevenDays-War(黒)

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 ルドラがエルセントに降り立って四日目の朝。
「この街にはいない」
 日の出と共に戻ってきたルドラは、それ以外には何の説明もしなかった。
 たった一晩で、どうやって広いエルセントの街を調べ上げたのかということを、アーノルドは訊ねなかった。
 ユノフィアはそれぐらいできて当然という顔で聞き、ウマに到っては、どこ吹く風といった様子だった。

 ウマは強制収容所での出来事を覚えていない。下腹の火傷についても、痛みがないので「知らぬ間にミミズ腫れができていて気持ち悪い」と感じている程度だ。
 遊女館にあるユノフィアの部屋で目を覚ましたウマは、同じ言葉を話すユノフィアに安堵し、それからは片時も傍を離れようとはしなくなった。
 一緒に捕まっていた少女については、行方が分からないとだけユノフィアから話してある。

「これ以上は隠し通せるとは思えない」
 朝食の席でアーノルドが発した言葉は、事実を告げていた。言葉の意味が分からないウマは、食事の手を止めてユノフィアに通訳をせがむ。
「森へ行く」
 ルドラはたった一言、それだけを口にする。
 聞きたいのはそんなことじゃない。アーノルドはそう思う。
 アーノルドが真に訊ねたかったことは、これから自分はどうしたらいいのかということだった。
 それが自分の行動を他人任せにする行為、つまりは自身の責任放棄であることに、彼自身は気が付けていない。
「北門から出て、西回りで森を目指す。追ってくるだろうが、百人も動員できるわけではないだろう」
 ルドラの顔には、百人に襲われても問題ないと書いてあった。
 アーノルドは今でもまだルドラに同行したいと思っていた。その気持ちは変わっていない。役に立てるのか、必要とされているのか、それが分からずに、同行を言い出せないでいるのだ。
 アーノルドは、「共に来てくれ」と言われるのを待っている、自分に自信が持てない小市民だ。それは、アーノルドが“騎士”ではないということを示している。

「すぐに出る。準備を」
 ユノフィアはルドラの言葉に頷くと、ウマにもその言葉を伝えて身支度を始めた。
 アーノルドの家が、アーノルドに対して余所余所しく動き出す。
 つい先ほどまで温かかった朝食の野菜スープは、その味と熱とを急速に失っていった。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近