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The SevenDays-War(黒)

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 ルドラが見下ろす先には、街道を進む一行の姿があった。その構成は、二頭引きの幌馬車が一台、その前後には、武装した人間が騎乗する馬が二頭ずつ並走している。

 ルドラはガルガンタットの目の鼻の先にいた。
 ガルガンタット付近は、起伏の激しい渓谷地帯になっており、街道は十メートルほどの崖の合間を縫うようにして街まで続いている。街道の両側が崖壁になっているため、物資の輸送中に襲撃されることもしばしば起こり得る。
 ガルガンタットから運び出されるのは主に鉄鉱と鉄鋼。運び込まれるのは、衣類・医薬・食料といった日用品ばかりだ。それらはエルセントから派遣された騎士団が護衛を行っている。

 ルドラの眼下を進んでいるのは、ただの輸送隊ではない。中央の幌馬車には、ルドラが追う“探し物”が積まれている。
「奪取も破壊も容易。なれど……」
 黒天馬の腹に一蹴り入れて街道に飛び降りれば、あとはたった数度、剣を振るうだけだ。それならば、相手に有無を言わさず、また、こちらも有無を問う必要はない。
 だがルドラは、人間が扉を開けようとしている方法を知っておきたいとも思う。
 サンクという人物が人間の世界で重要な地位に就いているのであれば、接触するのには手間が掛かる。命を奪うだけで済む一般人とは違うのだ。人間社会に疎いルドラであっても、それぐらいの想像は付く。

 思考を巡らせていた最中、ルドラは魔界の波動を感知する。眼下を通り過ぎて行くものとはまた別の反応であり、ガルガントの山中より伝わって来ている。
 つまり、自然に発生した隙間を通り抜けた、“脱走者”が現れたということだ。

 ルドラは人間への擬態を解除する。
 そしてすぐに数匹の蝙蝠を召喚した。姿形は蝙蝠のそれに酷似しているが、それらは生物ではなく、監視対象の情報を持ち主に送る能力を持つ魔道具である。
 それらを眼下の幌馬車に向けて飛び立たせると、ルドラはすぐ脇に控えていた黒天馬に跨った。すでに黒天馬の擬態も解除されている。

「退屈な夜になりそうだ」
 ルドラは踵を返し、ガルガント山脈に向けて黒天馬を走らせた。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近