The SevenDays-War(黒)
ルドラには、サンクが残した波動の残りカスを辿れる間に、ここで何をしていたのかを探っておこうという思惑があった。時間的に考えても、サンクがこの宿場に“探し物”を持ち込み、一泊してエルセントに戻ったことは間違いない。
人間が見つけた“牢獄の扉を開ける方法”に期待している。
ルドラは自身の内に渦巻くその思いに気付いてはいなかった。
騎乗したまま宿場を歩くルドラに対し、住人は遠慮のない視線をぶつけてきた。
それは奇異の目であった。
騎乗したままの移動は、上位の役人にのみ許された行為であり、それもこの宿場においては非常時にのみ許される。そのため、住人は何事かと振り向くのだ。
住人の関心が高いのには、この宿場の性質が影響している。
この宿場は、巨大な“遊女館”なのだ。健全不健全、合法非合法、揃いに揃ったスキャンダルの宝庫である。もちろん、ルドラはそんなことを知る由もない。
ルドラは一軒の宿の前で黒天馬を止めた。
「少し話を聞きたい」
キセルを咥えた女が顔を出していた二階の窓に声を掛ける。
女はゆっくりと煙を吹き、勿体つけるようにルドラを見やる。
「アンタ、お役人には見えないけど?」
乱雑に結っただけのように見える髪が、さらさらと風に揺れている。美しいという印象よりも、艶やかな色気を感じさせる。
「役人でなければ話は聞けないのか?」
「お役人でも、お客さんじゃないなら話しなんかしないさ」
「では客になろう」
女は、ルドラを値踏みするように観察する。
「お兄さん、いい体してるじゃないのさ。そっちのほうも自信あるのかい?」
「当然だ。一振りで勝負は決まる」
ルドラは剣の話をしたのだが、女の質問はそうではなかった。
「アハハ。大した自信だね。店、今日は休みなんだよ。明日、陽が沈んだ頃にまたおいでよ、アタシが相手させてもらうからさ?」
女は髪留めを外し、それをルドラに投げ落とす。
「約束したよ? 必ず返しに来るんだよ」
女は悲しげに微笑んだ。はらり、と広がる髪が、官能的な色気を増幅させる。
「約束は守る」
ルドラの答えに満足したのか、女は窓際を離れて奥に行ったきり、二度と姿を見せなかった。
人間が見つけた“牢獄の扉を開ける方法”に期待している。
ルドラは自身の内に渦巻くその思いに気付いてはいなかった。
騎乗したまま宿場を歩くルドラに対し、住人は遠慮のない視線をぶつけてきた。
それは奇異の目であった。
騎乗したままの移動は、上位の役人にのみ許された行為であり、それもこの宿場においては非常時にのみ許される。そのため、住人は何事かと振り向くのだ。
住人の関心が高いのには、この宿場の性質が影響している。
この宿場は、巨大な“遊女館”なのだ。健全不健全、合法非合法、揃いに揃ったスキャンダルの宝庫である。もちろん、ルドラはそんなことを知る由もない。
ルドラは一軒の宿の前で黒天馬を止めた。
「少し話を聞きたい」
キセルを咥えた女が顔を出していた二階の窓に声を掛ける。
女はゆっくりと煙を吹き、勿体つけるようにルドラを見やる。
「アンタ、お役人には見えないけど?」
乱雑に結っただけのように見える髪が、さらさらと風に揺れている。美しいという印象よりも、艶やかな色気を感じさせる。
「役人でなければ話は聞けないのか?」
「お役人でも、お客さんじゃないなら話しなんかしないさ」
「では客になろう」
女は、ルドラを値踏みするように観察する。
「お兄さん、いい体してるじゃないのさ。そっちのほうも自信あるのかい?」
「当然だ。一振りで勝負は決まる」
ルドラは剣の話をしたのだが、女の質問はそうではなかった。
「アハハ。大した自信だね。店、今日は休みなんだよ。明日、陽が沈んだ頃にまたおいでよ、アタシが相手させてもらうからさ?」
女は髪留めを外し、それをルドラに投げ落とす。
「約束したよ? 必ず返しに来るんだよ」
女は悲しげに微笑んだ。はらり、と広がる髪が、官能的な色気を増幅させる。
「約束は守る」
ルドラの答えに満足したのか、女は窓際を離れて奥に行ったきり、二度と姿を見せなかった。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近