The SevenDays-War(黒)
「さて、門兵長代理としてお出迎えしなくちゃな。奴が通り過ぎたら、そのまま街の外に出てくれて構わない」
アーノルドは城壁の内部へ降り、ルドラもその背中を追う。
「いけねぇ、忘れるところだった」
不意にアーノルドが振り向いた。
「使ってくれ。数少ないことで有名な北門発行の通行証だ。そいつがあれば、東西南北どの門からでも出入り自由だ。狙ってる物好きもいるから気をつけろよ?」
アーノルドは笑いながら「冗談だよ」と付け加える。
「素性の分からない者に渡してしまっていいのか?」
「アンタはすんげえ強い。その気になれば門の一つや二つ強引に通れる。どうやっても止められないなら、素直にお通り願った方が怪我人もでない」
「なるほどな。理に適っている。こちらとしても余計な争いは避けたい。ありがたく受け取らせてもらう」
「否定しないんだな」
「何をだ?」
「門の一つや二つ、強引に通れるってことをさ。じゃあな、縁があったらまた会おう」
アーノルドは前を向いて、背中越しに大きく手を振った。
豪華な造りの馬車が北門を通り抜けていった。
二頭引きの大きな馬車で、御者席が高い位置にあった。座席は完全に覆われていて、外からでは乗っている人数すらも分からない。
道の左右に頭を下げた衛士が並ぶ。門兵長代理であるアーノルドもその中に含まれている。
ルドラは馬車を見送ると、アーノルドの傍へと歩み寄った。
「残念な報せだ。馬車に乗っていた人間は、探し物と無関係ではなかった」
魔界の波動が更なる北上を続けていることは間違いない。だがルドラは、馬車から波動の残りカスを感じ取っていた。
「そいつはまた……」
アーノルドは困り顔を浮かべ、後頭部をボリボリと掻いた。
「サンクとやらのことを詳しく聞かせて欲しい」
ルドラは、周囲に聞き耳を立てている者がいないかを探る。
「奴のことを教えるのは構いやしないが、代わりに俺も教えて欲しいことがある」
アーノルドは少し考えた後にそう言った。
「教えられることならば」
「俺に剣を教えて欲しい」
いつもにやけている印象のあるアーノルドだが、このときばかりは真剣だった。真の強者だけが持ち得る意志の宿る瞳が、真っ直ぐルドラに向けられていた。
「いいだろう」
アーノルドは城壁の内部へ降り、ルドラもその背中を追う。
「いけねぇ、忘れるところだった」
不意にアーノルドが振り向いた。
「使ってくれ。数少ないことで有名な北門発行の通行証だ。そいつがあれば、東西南北どの門からでも出入り自由だ。狙ってる物好きもいるから気をつけろよ?」
アーノルドは笑いながら「冗談だよ」と付け加える。
「素性の分からない者に渡してしまっていいのか?」
「アンタはすんげえ強い。その気になれば門の一つや二つ強引に通れる。どうやっても止められないなら、素直にお通り願った方が怪我人もでない」
「なるほどな。理に適っている。こちらとしても余計な争いは避けたい。ありがたく受け取らせてもらう」
「否定しないんだな」
「何をだ?」
「門の一つや二つ、強引に通れるってことをさ。じゃあな、縁があったらまた会おう」
アーノルドは前を向いて、背中越しに大きく手を振った。
豪華な造りの馬車が北門を通り抜けていった。
二頭引きの大きな馬車で、御者席が高い位置にあった。座席は完全に覆われていて、外からでは乗っている人数すらも分からない。
道の左右に頭を下げた衛士が並ぶ。門兵長代理であるアーノルドもその中に含まれている。
ルドラは馬車を見送ると、アーノルドの傍へと歩み寄った。
「残念な報せだ。馬車に乗っていた人間は、探し物と無関係ではなかった」
魔界の波動が更なる北上を続けていることは間違いない。だがルドラは、馬車から波動の残りカスを感じ取っていた。
「そいつはまた……」
アーノルドは困り顔を浮かべ、後頭部をボリボリと掻いた。
「サンクとやらのことを詳しく聞かせて欲しい」
ルドラは、周囲に聞き耳を立てている者がいないかを探る。
「奴のことを教えるのは構いやしないが、代わりに俺も教えて欲しいことがある」
アーノルドは少し考えた後にそう言った。
「教えられることならば」
「俺に剣を教えて欲しい」
いつもにやけている印象のあるアーノルドだが、このときばかりは真剣だった。真の強者だけが持ち得る意志の宿る瞳が、真っ直ぐルドラに向けられていた。
「いいだろう」
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近