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The SevenDays-War(黒)

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「あの馬車がそうだ」
 翌夕のエルセント北門城壁の上で、アーノルドは街道の先に見える小さな点を指差した。

 エルセントの北東部には森林が広がっている。
 そこで行われている動植物の狩猟・採取は、王都における生活の一角を担っている。南西に広がる通称“蛮族の森”に比べて非常に安全性が高いため、北東の森が主な狩場となっている。
 北西部は、岩や石で覆われた荒地となっている。
 集落を形成できるほどの平地がほとんど存在しておらず、同様の理由により、農業面において活用することができないため、森での狩猟・採取作業の中継基地が建設されにくいという影響を生んでいる。定住する者がいなければ、中継基地の機能は果たせないからだ。
 以上の理由から、北東部の森林における採取場所は、ヨーン河の渡河地点となっている河畔の街アゴへと伸びる、東の街道沿いに集中している。

 荒地を北に抜けた先には、ガルガント山脈がその雄大な姿を誇示している。
 エルセント以北には、山脈の鉱物資源を採取するためのいくつかの鉱山街と、産出した鉱物資源を一括して管理する鉄工都市ガルガンタットが存在するに止まっている。
 エルセントからガルガンタットまでの道中には、最低限の宿場が建設されているのだが、利用者が少ないために閑散としている。それらは宿場とは名ばかりの無人宿のようなものだが、エルセントに一番近い宿場に限っては、全く別の理由からしっかりと宿場の機能を保持していた。

 ルドラはアーノルドが示す方向に視線を飛ばす。
 ルドラが追う魔界の波動は、一日が過ぎた現在も北への移動を続けている。サンク卿と呼ばれる人物がこのエルセント北門に近づいて来ているのであれば、ルドラはサンク卿に用がないということになる。
 見る必要はないが、ルドラは敢えて馬車を探した。
「よくもあんな遠くが見えるものだな」
「ここから毎日見てるからな。ほら、なんとかは高いところが好きって言うだろ?」
 アーノルドはまんざらでもない様子で得意気に笑う。
「すまない。そういった類のものは苦手だ」
「俺やアンタみたいな男のことを言うんだよ。俺らは同類さ」
「同類? 誰がだ?」
「俺たちが、だよ」
「残念だが、我らは同類ではない」
「みんなそう言うんだって」
 アーノルドは腹を抱えて笑いながら、ルドラの背中を叩いた。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近