The SevenDays-War(黒)
ルドラ本人でさえも、なぜ承諾したのかを把握できていなかった。ただ一つ言えるのは、決して嫌ではなかったということだ。
「お手柔らかに」と握手を求めたアーノルドだったが、その手が握り返されることはなかった。
ルドラがいつの間にか傍らに寄っていた黒馬に跨っていたからだ。
「すまんが、少し急がねばならなくなった」
ルドラは門の外、遠い北の地を睨むように見やる。
「探し物、見つかるといいな」
剣を教わることができないのは残念だが、旅立つ者を引き止めるようなことはしない。
門兵長として、少ないながらも旅人を送り出してきたアーノルドは、そんなことは重々承知の上だ。
エルセント北門から旅立つ者は、ガルガント山脈に向かう者ばかりだ。ガルガント山脈は強力な魔獣が徘徊する最上級危険指定地域であり、そこに足を踏み入れるには、国王もしくはエルセント騎士団長の許可が必要となる。北方ガルガンタットにおいては、騎士団の影響力が強く、大聖堂や魔術院は一切口出しできないのである。
アーノルドが門兵長に就任して一年、少なくない数の者たちが許可証を持って北門を出たが、一人として戻った者はいない。
つい先日も、九人という大所帯がガルガント山脈に向かったところだった。
許可証を持っていなくとも、ガルガント山脈に入ることはできる。ただし、許可証を持っている場合は、ガンガンタットにおける治療費、宿泊費が免除される。その上、街の鍛冶師たちがこぞって「自分の武器を使ってくれ」と集まってくるため、無償で優れた武器を手に入れることもできてしまう。
最上級危険指定地域から生還した者が使っていた武具を造った鍛冶師となれば、その名が大陸中に知れ渡るからだ。
尤も、使い慣れない武器を使って生き抜けられるほど甘い場所ではない。
「山に入るのか?」
「わからない」 ルドラは首を横に振る。
以前に質問を投げたときと同じ調子、同じ動きだった。
きっと入ることになるのだろう。アーノルドはそう思う。
「心配するな。約束は守ってもらう」
アーノルドが「それでは立場が逆だ」と口にするよりも先に、ルドラの駆る黒馬は風のように走り去っていった。
「お手柔らかに」と握手を求めたアーノルドだったが、その手が握り返されることはなかった。
ルドラがいつの間にか傍らに寄っていた黒馬に跨っていたからだ。
「すまんが、少し急がねばならなくなった」
ルドラは門の外、遠い北の地を睨むように見やる。
「探し物、見つかるといいな」
剣を教わることができないのは残念だが、旅立つ者を引き止めるようなことはしない。
門兵長として、少ないながらも旅人を送り出してきたアーノルドは、そんなことは重々承知の上だ。
エルセント北門から旅立つ者は、ガルガント山脈に向かう者ばかりだ。ガルガント山脈は強力な魔獣が徘徊する最上級危険指定地域であり、そこに足を踏み入れるには、国王もしくはエルセント騎士団長の許可が必要となる。北方ガルガンタットにおいては、騎士団の影響力が強く、大聖堂や魔術院は一切口出しできないのである。
アーノルドが門兵長に就任して一年、少なくない数の者たちが許可証を持って北門を出たが、一人として戻った者はいない。
つい先日も、九人という大所帯がガルガント山脈に向かったところだった。
許可証を持っていなくとも、ガルガント山脈に入ることはできる。ただし、許可証を持っている場合は、ガンガンタットにおける治療費、宿泊費が免除される。その上、街の鍛冶師たちがこぞって「自分の武器を使ってくれ」と集まってくるため、無償で優れた武器を手に入れることもできてしまう。
最上級危険指定地域から生還した者が使っていた武具を造った鍛冶師となれば、その名が大陸中に知れ渡るからだ。
尤も、使い慣れない武器を使って生き抜けられるほど甘い場所ではない。
「山に入るのか?」
「わからない」 ルドラは首を横に振る。
以前に質問を投げたときと同じ調子、同じ動きだった。
きっと入ることになるのだろう。アーノルドはそう思う。
「心配するな。約束は守ってもらう」
アーノルドが「それでは立場が逆だ」と口にするよりも先に、ルドラの駆る黒馬は風のように走り去っていった。
作品名:The SevenDays-War(黒) 作家名:村崎右近