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ハヤト

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ある時、学校でこんな発表がありました。
「次回の全国模試の英語で校内上位2番以内の人がイギリス留学が許可され、支援金が全額支払われる」その頃の私の英語の成績は校内で10番目から、20番目位。彼は30番目位でした。その上、成績がいつも一番の女の子はこの留学の話を、私達よりもっと早く知らされていた様です。
 ハヤトが私に、
「カンナ、模試までまだ3か月もあるじゃん。いつもダントツ一位の上原静ってやつも偏差値75位だってことだから、その上を行けばいいんだろ。今までやっていたスペイン語やドイツ語、ビジネスの勉強をしばらく休んで、英語に集中すればいいんだよ。俺達は味方がいなくても、模試は実力の世界だよ」
 そう言って私達は英語の勉強に集中しました。
 7月下旬の模試を受け、秋の9月上旬になると、模試の結果が出て校内に張り出されました。
 
1位 藤沢カンナ98点
2位 呂ハヤト96点
3位 上原静89点
4位 久保田正孝81点
5位 飯田純平79点
6位片山晴菜76点
………
教師は決して優等生ではない私達が選ばれた事に対して、納得がいかないようでしたが、決まりは決まりです。
 否定されたものの反逆と言うのでしょうか、この好ましくない結果は光の当たらない私達に何かの間違いで発行された、幸せのパスポートです。
 私達はイギリス行が許される事になりました。
作品名:ハヤト 作家名:松橋健一