ハヤト
「カンナ…」
「しゃべっちゃダメ…」
「いいんだ。もう終わりだ。だったらせめてカンナお前と話しておきたい。ゴホッゴホッ」
「残念だ。本当に残念だ。俺は間もなく死ぬ。このあとやりたい事がいっぱいあるのに。
まだまだ力が有り余っているのに」
「ゴホッゴホッ」
ハヤトは天井を見上げて、
「無様だ。本当に無様だ。そうだよ。分かっていた。俺達のビジネスも言ってみれば虚栄だよ。見ろこの様だ。ゴホッ死んだら何も残らない。死ぬって最初から分かっていたんだ。この幸せもいつまでも続かないって分かっていたんだ」
ハヤトは続けました。
「幻を追いかけてたんだよ。ひたすら幸せの為に、仕事で駆けずり回っていた。走り回って忘れた気になっていた。青春を謳歌しようとしていた。でも分かっていたんだ」
「俺たちの青春はいわば逆説だ。最初から幸せなんてなかったんだよ。俺たちの青春は逆説からくるものなんだよ」
私は涙交じりに必死に首を振りました。
ハヤト死んでほしくない。私を一人にしてほしくない。私の青春はすべてはあなただったっていうのに。
コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ
孤独イヤダ、孤独イヤダ、孤独イヤダ、孤独イヤダ
一人イヤダ、一人イヤダ、一人イヤダ、一人イヤダ、一人イヤダ、一人イヤダ
ああ、神様、あの夕日の向こうにも届くような声で誓って言います。
私達の青春が逆説からくるものだったとしても、その愛は本物だったという事を。