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ゴキブリ勇者・医者編(その2)

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しばらく沈黙がながれる。
マコト君はなにかを決意したように目を開き、こちらを見た。


「先生……手を借りますね」


彼は、俺の手を布団から引き出してそっと握った。


「エリカも」


促されて、そこには彼女の手も加わった。
俺は手を振り払うことも、握ることも出来なかった。


「先生、今は俺達がいます。
俺達は絶対に先生を一人にしたりしません」


なんの根拠もない言葉だと俺は笑った。
もう俺は信じることに疲れていた。
それに俺は周囲の人間を傷つけてしまう。
彼や彼女の心に大きな傷をつけたのは俺だ。
妻に八つ当たりをして怒鳴り付けていたのも、反対されてもクラウン商会と手を組んでいたのも俺だった。
俺はクソ野郎だ。
そう言うと、二人は俺の手を力強く握った。


「先生はクソ野郎なんかじゃありません。
そんなもの、抱えなくて良いんです。
もう捨てちゃって良いんですよ」

「そうですよ。少なくとも私は全然気にしてません」


ただの慰めであったのかもしれない。
けれど、俺は柔らかい眠気に誘われて、そのまま目を閉じた。
意識が薄れても、俺の左手はずっと握られたままだった。