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ゴキブリ勇者・医者編(その2)

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翌日、目を覚ました俺は二人に頭を下げ続けた。
二人はやめてくれと焦っていたが、俺はどうしても頭をあげることが出来なかった。
その様子を見ていたアイちゃんはてこてことやって来て、俺に抱きついた。


「また泣いてるの?」


二人は俺に気を使い、慌ててアイちゃんを連れていこうとした。
だが、俺は気がつくと彼女の頭を撫でていた。


「泣かないで?」


俺に頭を撫でられながら、彼女は可愛らしい瞳でこちらを見上げている。
優しいところは両親に似たのだろう。
俺はアイちゃんを抱き上げた。


「うん、もう大丈夫だよ」


遠い昔、エミを抱っこしたことがあった気がする。
おしめをかえたことがあった気がする。
小さな滑り止め付きの靴下に感動したことがある気がする。
俺はアイちゃんに気づかれないように、こっそり泣いた。


「また、いつでも泊まりに来て下さい」


しばらくして、住むところが決まった俺を、彼らは名残惜しそうに見送ってくれた。
ずっと手を振ってくれたことを俺はいつまでも忘れないだろう。
例え彼らがそのことを忘れたとしても。


「俺は君達を許せる気がする」


呟いた声は風にのってどこかに消えた。
もう少しすれば梅雨が開け、夏がやってくる。
気の早いセミの声を聞きながら、俺は歩き出した。
もう写真がなくても、俺は二人の姿を思い出すことができた。


ー終わりー