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【創作】「咎人の系譜」

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ルイとラズールが家々の戸に奇妙な模様を描くのを、耕太は野次馬に混じって遠巻きに眺める。礼はいらないと言っていたが、後になって約束を反故にするのではないかと疑っていた。異人の言うことなど、鵜呑みにしてもいいものだろうか。
ラズールがルイになにか話しかけ、ふいと場を離れる。ルイはそのまま模様を描く作業を続け、村人達はルイに合わせて動いた。耕太はラズールの行方が気にかかり、そっと人の輪から離れ、ラズールの後を追う。


耕太が後を付けているのに気づいているのかいないのか、ラズールは軽快な足取りで村はずれの神社までやってきた。耕太が様子を窺っていると、ラズールは素早くお堂の裏手に飛び込んでいく。驚いて追いかけたら、後ろから肩を叩かれた。

「ひいっ!」
「おっと、驚かせて悪かった。僕はラズール。君は耕太だね?」

振り向けば、いつの間にかラズールが背後に立っている。くすんだ色の目に、耕太は言いしれぬ不安を覚えた。神社を冷えた風が通り過ぎ、汗ばんだ首筋を撫でていく。

「な、えっ、なんで、俺の名前」
「ああ、失礼。こういう時は、帽子を脱ぐのが君達の礼儀だね」

ラズールが、頭に乗せている帽子をひょいと持ち上げた。奇妙に曲がった角が現れ、耕太はぎょっとして後ずさる。

「あ、あんた、鬼の仲間かっ」
「まさか。鬼ってのはこう、まっすぐな角が生えてるものだよ」

ラズールはくすくす笑いながら、指を立てて自分の額に当てた。相手の呑気な口調に、怯えている自分が馬鹿みたいな気分になってくる。耕太は気を取り直して背を伸ばすと、何でもないことのように相手の角を眺め回した。

「異人ってのは、角まで生やしてるのか」
「いや、僕みたいなのは珍しいよ。ルイには、あまり見せびらかすなと言われていてね。怒られるから、このことは内緒にしてて欲しいな」

片目をつぶってみせるラズールを見て、耕太は肩の力が抜ける。何故、こんな相手を怖がっていたのだろう。確かに奇妙な角を生やしているが、異人というのは奇妙な姿をしているものだ。
気が大きくなった耕太は、遠くに見える屋根に視線を移した。今頃、ルイが変な模様を描き続けていることだろう。

「あの模様、効果あるのか?」
「あるよ。追い払うことはできないけど、手は出せなくなる。鬼は苛立つだろうね。まあ、こちらで対処するから、君達は心配しなくていい」
「あんたらの個人的な理由ってのは?」

耕太が聞くと、ラズールは指を一本立てると唇に当て、片目をつぶってみせる。

「内緒。ルイに怒られるからね」



作品名:【創作】「咎人の系譜」 作家名:シャオ