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【創作】「咎人の系譜」

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畑仕事を終えた耕太となつに、通りかかった浅黒い男が近寄ってくる。

「おう、耕太。今夜、爺様の家で集まるかんな。お前も来いよ」
「分かった。今度は誰がやられた?」
「三郎んとこの鶏だ。綺麗に首だけ喰われてたらしい。ここんとこ立て続けだからな。こりゃあ、何とかせんといかんだろ」
「そうだな。畑を荒らされでもしたらたまらんし」

じゃあなと言い残して、浅黒い男は立ち去った。耕太は振り返ると、不安そうな顔のなつに向かって頷く。

「帰ろう。子供達が待ってる」

このところ、家畜や作物が荒らされる被害が相次いでいた。村人達は物の怪の仕業ではないかと怯え、なんとか鎮める方法を模索している。加えて、耕太にはなつにも話していないことがあった。

被害が出始めると同時に、奇妙な夢を見始める。
幼い耕太の目の前で、鬼が家族を襲っていた。だが、それはなつや子供達でも、養父母でもない。記憶にない、最初の家族。
鬼は全員を喰い殺した後、耕太に手を伸ばす。泣くことも動くことも出来ない耕太は、血の滴る鋭い爪を見つめるだけ。
不意に視界が遮られ、異国の衣装を着た少女が鬼の前に立ちふさがる。

『大丈夫。お姉ちゃんが守ってあげる』

いつも、そこで目が覚めた。



港に船が着き、周囲に活気が満ちる。
異国の言葉が飛び交い、恰幅の良い男達が悠然と船から出てきた。そこに混じって、一人の少女が船から下りてくる。少女は足を止めて手をかざし、空を見上げた。潮風が少女のスカートを揺らす。
その後ろから、旅行鞄を下げた青年が声をかけた。

「ルイ、言葉は分かる?」
「大丈夫よ、ラズール。それより、角隠せって言ったでしょあんたは!」

ルイは後ろの青年を振り向くやいなや、腕をばしっとはたく。ラズールはこめかみから生える二本の曲がった角を撫で、くすんだ色の髪に帽子を被せた。

「今更、誰も気にしやしないよ」
「あたしが気になるの!!」
「すぐに慣れるさ」

ラズールは軽快な足取りで人波に紛れ込んでいく。ルイは苛々と舌打ちしてから、ラズールの後を追った。


作品名:【創作】「咎人の系譜」 作家名:シャオ