偽電車男 第一部「栄光と地獄」②
26.恋愛相談とマリちゃんへのアプローチ
マリちゃんを一度泣かせてしまった夜、もう訳わからなくなった。
異性の意見が聞きたい。
そこで、もうメールしないと決めていたが、ミズキさんに相談しよう。そうしよう。として、すぐメール。
「マリちゃん、泣かせてもうた・・」
「何があったの?どうしてそうなったの?」
「嫌、実はな・・。あ、電話の方が速いや。」
そして電話で久々に話した。
今までの経緯を概略だけ。
今、俺がまわりの社員から何されているかとかは言わなかった。
それを知られると、事情を知っているとしてミズキさんまで同じ目にあっていじめをくらいかねない。
そしてミズキさんからも
「マリちゃんの気持ちは考えたことある?」
「俺なりに色々やってんだけどさぁ・・」
「何があってもさ、結局、マリちゃんとマリちゃんの相手が選んだ人が一緒になるのが、幸せなんじゃない?余計なことしてるよ。」
「うーん・・・まぁ、そうだな。誰かが幸せかどうかなんて本人にしか分からないんだよな。相談乗ってくれてありがとう。この礼は貸しにしといてくれ。」
「気にしなくていいって。」
ミズキさんにこれからアプローチする訳でもないのに、マリちゃんにあんなこと伝えても、泣くのは当たり前なのかな。
彼女の淡い恋心を潰してしまったのかな・・。
彼女は俺に思いを何とか伝えようとしてくれてたのかな。
でも、俺は決めた。
マリちゃんが本当に心から決めた相手と一緒になるのが、一番の幸せなんだ。
いじめに耐え切って、また彼女が俺を選んでくれる・・・そんな奇跡があるのなら、今はこの状況でも耐えよう。
そう思っていた。
その日が来ることは無いのだとしても。
たとえ、彼女が選んだ相手が、シンイチさんやキョウスケさんで彼女に絶対似つかわしくないと思っても、彼女が決めた相手なら幸せになれるさ。
・・・・・
そんなやりとりと、俺の決心を知らず、まわりのいじめがどんどんエスカレート。
キョウスケさんとマリちゃんの今までのことや、いじめのことを知られる前に、俺を追い出そうとして色々やってきた。
業務中もデスクの後ろから肘をぶつける客先社員や、「ストレスであいつが禿げ上がるまで観察しようぜ」とかほざく客先社員、イスから腐ったぞうきんのような臭いがすることもあった。
俺も対抗して、休憩時間中にスチール缶を素手で変形させて、上下半分に引きちぎって見せたり、後ろに来たクソ客先社員の足をイスで軽く引いてすぐに謝ったりしてみせた。
俺は睡眠障害になって、ストレスでウイスキーを生のまま飲んだり、いきなり仕事中に原因不明で身体が熱くなって、汗をすごくかいてバファリンをオーバードーズして、無理やり体温を下げたりした。
業務中も、プライベートでも嫌がらせやいじめは続いた。
で、マリちゃんはというと、シンイチさんには言い出せず、キョウスケとも付き合えないような状態。
キョウスケの野郎は、俺を追い出しさえすれば、まわりが何とかしてくれてマリちゃんとまた付き合えると思っていたみたいだ。
周りの客先社員たちが、マリちゃんの発言に責任をとるように脅迫じみた発言をして脅したりし始めた。
サトウも「キョウスケさんと付き合わないと、あいつ (俺のこと)にもっとひどいことしますよ」と脅迫した。
もう、このときは毎日なんとか仕事を早く切り上げて夜に川原で身体を鍛え上げることしか考えてなかった。
有事に備えて。
ストレス解消をしながら。
チームメンバーに相談したが、ワタセさんは関係者に事情聴取しても、そんなことは言ってなく、お前がおかしくなって言ってるだけだと。
疲れていると判断されて、気分転換にライブに誘われた。
ノブヒコさんにも相談したが、それは恋愛相談だけ。
作品名:偽電車男 第一部「栄光と地獄」② 作家名:ぎーくおぶじえんど