雨は彼女を許さない
きーんこーんかーんかーんかーん
6限目の終わりを告げる鐘の音(電子音)が響く。今日もよく勉強したな、うん。橋本は年功序列と言うアレなのか、学年主任を担っていて、校内を走り回っている。そのため、終礼は時々省かれるのだった。今日も自由解散らしい。部活やら補習やらで、皆、散り散りに教室を後にする。さて、俺も帰らなきゃな。
―下駄箱。
靴を履き替えて正門へ。・・・ん。美香ちゃんだ。何してんだろ。
一人で突っ立ってる。ああ、傘、忘れたのかな。ん?朝も雨は降っていたはずなのに。どうして?
「やあ。何してんの?」
まあ話しかけるじゃん?
「・・・」
シカトされるじゃん?ちょっと悪戯したくなるじゃん??
「どういう事情か知らないけど、傘、貸そうか?帰れないでしょ(笑)」
へへ。
「・・・」
彼女は無言のまま外へ足を踏み出した。おいおい。いくらなんでもこの大雨の中を濡れて帰ろうってのは無理だろう。
すると、見る見るうちに雨雲が裂けて太陽の光が差し込んで来た。
まるで美香ちゃんがそうしたかのように、瞬く間に空が晴れていく。雨雲はぐんぐん消えて行き、どこにも見えなくなってしまった。
美香ちゃんは迷うことなく歩みを進める。ちょ、まてまてまて。
「ねえ!今の何?雨止むのわかってたの?今日は一日中雨の予報なのに」
またシカトされんのかな・・・。もう2回目なんだよ、実は傷ついてんだよ。
「・・・」
はいはい。意思疎通不可能ですか。いいですよもう、別に。
「・・・雨、邪魔だったから」
・・・お?今、喋った!っじゃなくて、
「邪魔だったから」って言った?
それは、まるで自分が雨を止ませたみたいに。