雨は彼女を許さない
「名前、自己紹介、はい。どうぞ」
少しの間をおいて、彼女は口を開いた。
「川島美香。よろしく」
クラスの男子達が何やらざわついた。
黒髪ショートに丸メガネ。そして、可愛い。こりゃモテモテだわ。しかし、メガネの奥に見える目には何だか力がない。転校初日に豪雨に見舞われたせいかなあ。
ぱちぱちぱちぱち
まばらな拍手が止み、またじいさんがマシンガンをぶっ放してきた。
「えーとな、席はな、おお、そこが空いとるな。ほれ、上島の隣」
いや、何言ってんだこの人は。
「せんせー、そこは金田君の席でーす」
委員長が皆の意見を代弁してくれた。
「あ?学校に来ない奴は居ないのと同じだろう」
ああ、そういうやつですか。高校になるとこんなもんなのかね。
まあいいや。悪いな、金田。話したことないけど。お前のおかげで転校生と隣の席だ。恨むなよ、金田。お前の席なくなっちゃったけど。
「はじめまして。よろしく!」
挨拶って大事だよね。
「・・・」
・・・。あれ、シカトですか?ちょっと慣れなれしかったかなあ。
仕方なく俺は席に座りなおした。後ろの方からクスクス笑い声が聞こえた。あれらは後でボコるとして、美香ちゃん無口キャラなのか。つまんねーの。