雨は彼女を許さない
ガラッ
「おーはよー」
「おはよう」
「っはよー上島」
「おはー」
いつものようにクラスメイトと挨拶を交わし、俺は席に着く。
今日、早くも梅雨入りしたらしい。天気の週間予報も今日からずっと雨だ。朝から強い雨に降られて、少しばかりブルーな気持ちになった俺はホームルームが始まるまでずっと、大粒の水滴が激しく打ち付けるだけの窓と、それに映る自分と睨めっこをしていた。
そうしているうちに担任の橋本が入って来た。
「はーいおはよう。今日も川田は休みかー。まあええ、お前ら、元気か。元気だな」
返すまもなく次の話に突入するようだ。定年直前の、所謂おじいちゃん先生のこの人は、かすれた声で、かつ、凄まじい速さでトークを展開する。
「今日はな、転校生来とるからな、両親の仕事の都合で越してきたらしいぞ。まあよくあるやつだな。ほれ、入らんかい」
また、この人はどこの訛りか判らない特徴的な抑揚をつける・・・というのは置いておいて、転校生?6月に?
「何をしとるか、早く入れ」
と言われ、すたすたと転校生が入場してきた。