小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

優しい嘘~奪われた6月の花嫁~

INDEX|22ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

 式が終わって教会の扉が開く。私と香君が腕を組んで姿を現すと、集まってくれた人たちが次々と祝福の声をかけてくれる。一斉にライスシャワーが私たちに降りかかり、クラッカーの音が賑やかに鳴り響いた。
 参列者の中にはもちろん彼の気さくで優しいお母さんもいるし、広島の小学校時代からの女友達の姿も見える。
 式の前に香君からの手紙を受け取ったらしい父は今、手紙を読みながら眼を紅くしていた。何を書いたか、彼は最後まで私に教えてくれなかった。
 私は手にしていたラナンキュラスのブーケを空高く放り投げた。
 純白の花ばかりを集めたブーケが抜けるような澄んだ初夏の空に吸い込まれていった。
 まるで夢の続きを見ているくらい、今、この瞬間、私は幸せだ。幼い頃から憧れた紅いバージンロードを通って、今日、私は香君の妻になった。
 香君と出会ってから一年、私を憧れていた六月の花嫁に彼は約束どおりしてくれた。
―いつかラナンさんだけを見て愛してくれる誠実な男が必ず現れるよ。
 私は今も彼のその言葉を忘れない。まさか、あの言葉を聞いたときは、その誠実な私だけを見てくれる男というのが彼自身だとは想像もしなかったけれど。
 コッコとラナン。
 インターネットが当たり前になった今だからこそ実った恋かもしれない。たまたま彼が私のブログにコメントして、私がそれに返信した。それが私たちの始まりだったことを思えば、メールが取り持った不思議な縁だといえる。
 そして、私は今も思うのだ。彼と私を結びつけたそもそもの始まりとなった、あの不思議な夢―ホワイトヘブンビーチに似た海の彼方から私を呼び続けていた人は誰だったのだろうかと。
                             (了)









☆六月の花嫁(ジューン・ブライド)にあこがれ
   歌 中澤裕子
   作詞・作曲 永井龍雲

夢の続きをまるで見ている そんな気持ちなの
あなたと始めた 愛の暮らしは
窓辺に花を飾ってみたり 壁に絵を掛けたり
あなたの帰宅(かえり)にときめく心
六月の花嫁にあこがれ 子どもの頃から
白亜の教会 紅いバージンロード
淋しい想いしてきて父と母の離婚(わかれ)
二人の分まで幸せになるの

内緒でそっとあなたが父に手紙を書いたこと
後から聞かされ 嬉しかったわ
母も一緒に住めるうにと あなたの優しさら
涙が溢れて止まらなかった
愛し合っても不安になる心は
哀しいトラウマ 今も拭いきれない
愛の力で乗り越え きっと強くなるわ
お腹(なか)に宿った命のためにも

六月の花嫁にあこがれ 子どもの頃から
白亜の教会 紅いバージンロード
淋しい想いしてきて父と母の離婚(わかれ)
二人の分まで幸せになるの
  
 
 

  
ラナンキュラス
   花言葉―あなたはとても魅力的。 
 


















   あとがき

 こんにちは、東です。岡山では梅雨入り宣言があった途端、雨続きです。でも、梅雨の静かにしっとりと降る雨とひと雨毎に色を深めてゆく紫陽花のお陰で、私は梅雨が嫌いではなく、むしろ好きです。
 さて、何と今回は久しぶりの現代物となりました。考えてみれば、この前に現代物を書いたのは去年の六月の?シークレットガーデン?でしたから、何とはや一年が経っているのですね! これには自分で愕きました。普段から特に書くジャンルを自分に強制しているわけではなく、実に気儘に書きたいものを好きなように書いているので、自然にこういう形になったわけですが、何とも一年ぶりとは。
 書かないときは現代物は一年に一度くらいのペースの時期もあり、私には特に珍しいことではないのですが、逆に現代物ばかり書いていた時期も過去にはありましたので―笑。
 まあ、それはともかく、こうして一年ぶりに書き上げた現代物はいかがでしたでしょうか?
 今回の物語の始まりというか発端は?夢?です。これは実は私自身が見た夢と体験をほんの少しだけリンクさせています。といっても、別に最初の?メル友さんが夢に出てきた?というだけで、このメル友さんは正真正銘の女性ですし、絶景と呼ばれるホワイトヘブンビーチも出てきませんでした―笑 
 いつか?恋とも呼べない恋の話?のように、まさに一パーセントの真実と九十九パーセントのフィクションから生まれた物語といえます。いえ、この場合は一パーセントではなく、〇.〇一パーセントかもしれませんが。まあ、本音を言えば、夢にメル友が出てきたというところだけを使い、後は私の妄想の産物でしかないわけです。でも、本当になったら、素敵かもしれないですね―笑
 今回の花はラナンキュラス。有名な花らしいですけど、私は実はあまりよく知らなかった。雑誌で見かけて良いなと思い、次の現代物で使おうと思っていました。あとは?六月の花嫁?というキーワードから、それにちなんだドラマか歌を使いたくて、適当なのが判らなかったため、検索をかけたら、中澤裕子さんの?六月の花嫁にあこがれ?という歌を知りました。
 なので、元々、知っていた歌ではないのです。更に、同じ歌を永井龍雲さんという方が歌っていることも知りました。元々、物語内にも書いているように、この歌は永井さんが作ったものなのですね。同じ歌なのに、男性と女性、しかも歌い手さんの歌い方・表現力によってここまで雰囲気が変わるものかと愕くような歌い上がりになっています。
 また永井さんはこの他にもたくさんの自作の曲を出していますが、どれも良い歌です。独特の深い声に魅了されました。
 今回はラナンキュラスという花と素敵な歌に出逢いましたが、これは予期せぬ収穫でした。小説を書くことで自分の世界が少しだけですが広がるのは、嬉しいし愉しいことです。
中澤裕子さんのことは知ってはいましたけれど、今まではモーニング娘。出身だということくらいしか知らなかったですが、色々な歌を歌う表現力のある歌手なんだなと認識も新たにできました。
 一年ぶりの現代物なので、アラも目立つ(ホントに)ことかと思いますが、これは他の書き手さんがよくおっしゃっているように?大きな心で見てやって下さい?ますようにお願いします。
 拙い作品ですが、私自身はとても愉しんで書けました。まあ、自分自身が愉しく書けたので、それで良かったのかなと思います。
 それでは、今回もありがとうございました。さて、今度、現代物を書くのはいつになることやら、また一年後?
 これは私自身にも判りません。それでは、皆さま、また次回作でお眼にかかることを心待ちにしております。
                       東 めぐみ拝 
二〇一五年六月六日  























     目 次

優しい嘘
      〜ジューン・ブライド(六月の花嫁)〜


  あとがき



































優しい嘘
          〜ジューン・ブライド(六月の花嫁)〜 
                 二〇一五年六月十二日発行
                 著者  東 めぐみ