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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 9

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懺悔



手首と頭を床に押し付けられる。痛い、と思うのに、どこか他人事のように感じる。もう感覚が麻痺してしまって、それでも恐怖だけは消えてくれない。繰り返し行われる拷問のような時間の中で、擦り減っていくのは心と身体と魂だった。

大丈夫、もうわかっている。これはちゃんと終わる。我慢していればいいんだ。それだけ。

自分にそう言い聞かせる。言い聞かせていても、とめどなく涙が落ちていく。頭ではわかっていても、心は納得できていないのだ。それがわかっていても、もう自分にはどうすることもできないけれど。

――お父さんとお母さんに喜んでもらいたいだろう?
――この家の子でいたいだろう?

けだものの、声が降る。そいつは痛みを与えることでこちらの意思を奪い、ときおり快楽を与えることで自尊心を踏みにじるのだった。自分は物でしかない。人形でしかない。人間ではない。動物ですらない。

大丈夫。終わるから。我慢していれば、終わるから。お願い。早く。終われ、早く。早く。

床に頬を押し付けられたまま、ただそれだけを唱え続ける。

たすけて、と唱える。誰でもいい。誰か。誰か。

「たすけて…」

こんなのは地獄だ。どうしてこんなことが許されるの。俺が何をしたんだ。何もしてない。

――ころしてやる…

喉の奥で、悲鳴にまじって唱え続ける。口の中で血の味がする。

――いつかおまえを ぜったいに ころしてやる






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作品名:慟哭の箱 9 作家名:ひなた眞白