慟哭の箱 9
懺悔
手首と頭を床に押し付けられる。痛い、と思うのに、どこか他人事のように感じる。もう感覚が麻痺してしまって、それでも恐怖だけは消えてくれない。繰り返し行われる拷問のような時間の中で、擦り減っていくのは心と身体と魂だった。
大丈夫、もうわかっている。これはちゃんと終わる。我慢していればいいんだ。それだけ。
自分にそう言い聞かせる。言い聞かせていても、とめどなく涙が落ちていく。頭ではわかっていても、心は納得できていないのだ。それがわかっていても、もう自分にはどうすることもできないけれど。
――お父さんとお母さんに喜んでもらいたいだろう?
――この家の子でいたいだろう?
けだものの、声が降る。そいつは痛みを与えることでこちらの意思を奪い、ときおり快楽を与えることで自尊心を踏みにじるのだった。自分は物でしかない。人形でしかない。人間ではない。動物ですらない。
大丈夫。終わるから。我慢していれば、終わるから。お願い。早く。終われ、早く。早く。
床に頬を押し付けられたまま、ただそれだけを唱え続ける。
たすけて、と唱える。誰でもいい。誰か。誰か。
「たすけて…」
こんなのは地獄だ。どうしてこんなことが許されるの。俺が何をしたんだ。何もしてない。
――ころしてやる…
喉の奥で、悲鳴にまじって唱え続ける。口の中で血の味がする。
――いつかおまえを ぜったいに ころしてやる
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