慟哭の箱 7
来訪
――野上の診察メモより
須賀旭の中の他人格との接触に成功する。清瀬が戻ったことで主人格である旭の心が安定し、人格を任意にスイッチできるケースが増えているようだ。
特に真尋(まひろ)、氷雨(ひさめ)と名乗る二人は協力的であり、カウンセリング中の呼びかけにも応じてくれることが多くなった。二人の話により、他人格の存在が徐々に明らかになっている。
真尋と氷雨の協力は、旭自身の前向きな思いに呼応するかのようだ。
清瀬が戻ってきたということが、彼らにとっての大きな引き金となったようである。
ただ、過去の傷を知る涼太はわたしを警戒して出てこない。
同じく支配人格である一弥(いちや)の存在も謎に包まれている。彼はわたしの呼びかけには応じないし、他人格によるスイッチも不可能である。接触はかなり難しいと思われる。
旭自身もその存在を感じているが、任意にスイッチすることはまだできないらしい。カギを握る人格とは接触できないが、少しずつ前進しているとは感じる。
なお旭によると、真尋らのもたらした情報以外の誰かの存在を感じている様子である。まだ、真尋らのあずかり知らぬところに潜む者があるのかもしれない。慎重に接触を試みていきたい。
交代人格についての情報を以下に記す。