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ゴキブリ勇者・カズキとマリ編

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「ま、マリ」


俺は酸素マスクをつけられていて、うまく喋れなかった。
だけど、俺が目を覚ましたことに気がついたようで、マリは俺に抱きついてきた。
俺はマスクを外した。


「マリ……」

「もう……なんでぶっ倒れてたのよ……!バカ……!」


マリは大泣きしていて、俺は戸惑うしかなかった。
こんなマリは見たことがない。
その後ろに、あのピンクの肌のおっさんが立っていた。


「一体なにがあったんですか?」

「俺は……海でマリのお母さんと会ったんだ」


まだ頭がぼんやりする俺をマリは睨み付けた。


「この期に及んで変な冗談やめて。ぶっ飛ばすよ」

「いや……マリとシンゴって人に伝言を頼まれたんだよ」

「どうして私の名前を……!」


マリの後ろでおっさんが目を見開いた。
マリも驚いて、俺とおっさんの顔を交互に見た。


「え……アンタ、シンゴっていうの?」

「ええ……アナタには隠していましたが、まさかカズキ君が知っているとは……」

「えーっと……マリのお母さんから聞いたんだよ。
それで伝言なんだけど」

「え、ええ」

『アナタがくれたブローチをまだ持ってます。こっちに来たら、またお話しましょう。
でも、出来るだけゆっくり来てね』

「そんな……まさか……」

「それとマリにも伝言が……なんだったかな」


マリは怯えたような目で俺を見た。
俺は迷わず、伝言を伝えた。


『今まで辛いことだらけだったのに、よく生きてこれたわね。
アナタは十分頑張った。
これからは幸せになって。
アナタのことお母さんは恨んでないから。
アナタのことが大好き』

「な、なに言ってんのよ……」

「確かにそう言ってたはずだよ。
俺は……」


まだ少しぐらつく頭を抱えて、俺は布団に手をついた。
マリは顔を青くしながら俺をのぞきこんだ。


「アンタ……本当に私の母親に会ったの?」

「多分……顔がマリそっくりで綺麗だったよ。髪は茶髪でふわふわしてて……。
白い柔らかそうなワンピースを着てた」


マリはなにも喋らなかった。
おっさんもなにも話さない。
俺はうつむくマリの頭にそっと触れた。


「……なにすんのよ」

「俺もマリは十分頑張ったと思うよ。
そんなマリが大好きだ」


マリは体をこわばらせたまま、なにも言わなかった。
おっさんもなにも喋らない。
俺はまためまいに襲われて、ベッドに倒れこんだ。
そしてそのまま、朝まで眠ってしまった。