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ゴキブリ勇者・カズキとマリ編

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俺は海にいた。
空は真っ青で、気持ちのいい雲が浮かんでいる。
波が気持ち良さそうで、俺は波打ち際に走った。


「すげー、水が本当に透明だ」


波の下の砂の一粒が見えるほど、海は澄みわたっていた。
こんなに綺麗な海は見たことがない。
まるで、どこか別の世界にでも来てしまったようだと、俺は遠い太陽を見上げた。


「カズキ君」


誰かが柔らかい声で俺を呼ぶので、そっと振り返った。
ふわふわとした服を纏った女性は俺を見てにこにこと笑っている。
その顔はマリとよく似ていた。


「どうしたの?」

「い、いえ。知り合いによく似てるなって思って」

「うふふ、私はねその子の母親なのよ」

「えっ?」

「私はマリのお母さんなの。はじめまして、カズキ君」

「は、はじめまして!」


俺は少しだけ違和感を覚えたが、それがなんなのかは分からなかった。
しかも、お母さんはマリとよく似た綺麗な顔で笑うので、俺は照れてうまく喋れなかった。


「今日はね、カズキ君とお話ししたくてアンリちゃんに無理をお願いしたの」

「アンリ?」

「アナタをここに連れてきた子よ。
いつもは公民館の鏡から離れたがらないんだけど、頼み込んだら聞いてもらえたの」

「は、はぁ」


俺はいまいちよく分からず、曖昧な返事をした。
マリのお母さんは柔らかく笑った。


「マリのこと好きになってくれてありがとうね。
あの子はちっとも素直になれないけど、あの子もカズキ君のことは好きなのよ?」

「え……でも、俺はマリを傷つけてしまいましたから」

「ううん、今も泣いてると思うわ。
カズキ君のこと傷つけたって」

「そうなんですか?俺にはそうは思えませんけど……」

「向こうに戻ったら分かるはずよ。
そのときにまだマリのことが好きだったら、そばにいてあげてね」

「……俺はマリを嫌いになったりはしません」

「うふふ、ありがとね。
マリが好きになったのがアナタで良かったわ」

「い、いえ」


マリのお母さんは少し遠い目をして、もうそろそろお別れの時間だと言った。


「その前にカズキ君に伝言を頼んでもいいかしら」

「えっ、はい。どうぞ」

「まずはマリにね。
『今まで辛いことだらけだったのに、よく生きてこれたわね。
アナタは十分頑張った。
これからは幸せになって。
アナタのことお母さんは恨んでないから。
アナタのことが大好き』って伝えて?」

「は、はい」

「それと、シンゴさんにも伝えて欲しいの。
『アナタがくれたブローチをまだ持ってます。こっちに来たら、またお話しましょう。
でも、出来るだけゆっくり来てね』
って。
お願いできるかしら?」

「はい!あ、でもシンゴさんって誰なのか俺には」

「大丈夫、向こうに帰ればわかるわよ。今日は本当にありがとね。
マリのことよろしくお願いします」


ふと、遠くから俺を呼ぶ声がした。
誰の声だか分からないが、俺は焦った。
その声は泣いていたのだ。
俺は……戻らなきゃ。

はっと目を覚ますと、泣いているマリの顔が目の前にあった。