ゴキブリ勇者・カズキとマリ編
俺はマリのことが好きだ。
でも、マリの過去を抱えてやれる自信はない。
所詮、俺は十才のガキだ。
自分のこともどうすることも出来ないのに、マリのことを変えてやれるはずはなかった。
「だけど、俺はお前のことが好きなんだよ……」
「あの子のこと、知りたい?」
突然後ろから話しかけられて、俺は驚きながら振り返った。
大きな建物の前に立っていたその子は俺と同い年ぐらいで、とても綺麗な顔をしていた。
まるで、この世の物ではないくらい美しくて、俺は思わず鳥肌がたった。
「教えてあげる、あの子のこと」
頷いたらダメだ。
身体中がそう悲鳴をあげてるのに、俺は頷いてしまった。
女の子は無表情のまま言った。
「いいわ」
次の瞬間、視界がグニャリと歪んだ。
女の子は崩れ落ちる俺をただ見下ろしていた。
俺はなにも抵抗できず、地面の感触を感じながら意識を失った。
作品名:ゴキブリ勇者・カズキとマリ編 作家名:オータ