短編集 1
ペテン師
その小国の王は病んでいた。
生まれついた時から、周りをぐるりと取り囲んだ大国の重圧に苛まれていて。
王には何年も前に先立たれた王妃との間に美しい姫がいた。
国内外で評判の美しい娘だった。
時に大国は姫を貰い受けるために攻め入ると声をあげ、別な大国は姫さえ差し出せば国には手を出さぬと内通をしてきた。
小心者の王は心弱き王は、どれもが信用できず、更なる不安の元となる姫を病みたる八つ当たりから日々拷問し、いっそのこと亡きものにしようとまで考えていた。
あるときそんな王の狂気につけこんだペテン師が王に甘言をする。
「姫様を殺してはいけませぬ、姫様を渡してもいけませぬ。この国とアナタ様はその娘がいることで生きながらえているのです」
既に狂っていた王はその言葉に騙されかろうじて姫を軟禁することにとどまる。
姫の美しさは本物であったが、王の所有する小国など大国は相手にもしていなかった。
全ては小心者の王の妄想だったのである。
適当な戯言でまんまと大金をせしめたペテン師は、更なる戯言を吹き込んだ。
「姫さえ手にすればこの国は安泰です。姫をアナタ様の妻にしてしまいましょう。ただし姫のちからの根源はその処女性にあるのです、それ以外の行為ならば…」
狂いし王はその言葉を鵜呑みとし、美しき姫の処女性を損なうことなく、それ以外の全てを毎夜毎夜無理矢理に陵辱した。
その狂った欲望をみたすため。
その様な鬼畜の如き行いが許されるはずもなく。
姫を哀れんだ大国によって攻め込まれ王は殺されてしまう。
そんな王の凶行を告げたのもかのペテン師ではあったのだが。
ペテン師は褒美として姫を貰い受けた。
そのように犯され汚された姫など大国の王は娶ることなどなかったからである。
かくしてペテン師は大金と美しき姫をまんまと手にすることになる。
辛く不幸な長い日々が今はなき王のように姫の心は壊れてはいたが。